吃音は発話障害の一種であり、音や語の一部が繰り返したり、引き延ばしたり、発話の継続・開始ができなくなる(難発)といった中核症状により発話の流暢性が阻害される。中核症状が重くなると社会参加に悪影響を与えることもあるので、中核症状を軽くする言語療法が行われる。しかし日本国内では臨床家が不足していて地域によっては十分な対応ができないこと、また、通院ができても自宅での練習では正しい発声か判断が難しいことが問題である。そこで、本研究では、言語療法として広く用いられる流暢性形成訓練の練習音声を自動評価するシステムの開発と評価を行う。ここでは、流暢性形成訓練の中で、柔起声と呼ばれる母音の難発症状を起こりにくくする出だしを柔らかくする発声方法について開発した、声帯振動開始直後の音響的な特徴に基づいた自動評価について、吃音のある実験協力者10名と吃音のない実験協力者8名を対象として短期訓練を実施した。画面上に声帯振動開始直後の声の音響的特徴を示す特徴量2つを2次元座標として表示し、それが専門家による理想的な発声の範囲に入るかどうかを判定する。実験協力者はそれを見ながら発声の練習を行った結果、普段の発声より柔起声が増加することが示された。また、子音の難発症状を減らすために発話にかかわる舌などの器官の動きを緩やかにする制御方法であるライトコンタクトについて、音響分析により周波数成分も緩やかに移行することを示し、ライトコンタクトの緩やかさを機械学習により自動評価する手法を開発した。吃音のある実験協力者と吃音のない実験協力者の音声のライトコンタクトの緩やかさを高精度に推定できることを示した。
|