研究課題/領域番号 |
17K01496
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研究機関 | 公立小松大学 |
研究代表者 |
李 鍾昊 公立小松大学, 保健医療学部, 准教授 (40425682)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 老年学 / 予測制御とフィードバック制御 |
研究実績の概要 |
本研究では高齢者の上肢の運動制御能力と、高齢者に好発する脳の萎縮や神経疾患による運動機能障害を運動制御の観点から定量的に把握できる「高齢者の運動機能ナビゲーターシステム」の構築を目的とする。特に今年度には手首運動において原因である4個の筋活動と結果である動き成分の因果関係に基づき、運動中の筋活動から脳内の運動制御器を同定する新しい方法を用いて指標追跡運動における予測制御とフィードバック制御を分離する方法を確立する研究を行い、その研究内容を共同研究者が英文雑誌(Frontiers in Human Neuroscience(2019))に掲載するのに2番目の著者として貢献した。また、高齢者に好発する脳卒中患者の回復過程を筋シナジーの観点から評価できる方法論を確立する共同研究を行い、その研究内容を共同研究者が英文雑誌(International Journal of Precision Engineering and Manufacturing(2019))に掲載するのに2番目の著者として貢献した。そして、小脳性修復に関して眼球運動の制御と四肢による随意運動、認知機能の3つの観点から調べる研究を行い、その研究内容を共同研究者が英文雑誌(Cerebellum(2019))に掲載するのに共著者として貢献した。また、高齢者の3次元空間上の上肢運動を3次元仮想現実空間で定量的に評価する方法論を確立する共同研究を行い、その研究内容を共同研究者が英文雑誌(BioMed Research International(2019))に掲載するのに共著者として貢献した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
3年目である31年度(令和元年)には、加齢に伴う脳の運動制御メカニズムの変化を運動制御の観点から分析できる「高齢者向け運動機能評価用のデータベース」に必要な症例としてこれまで20歳代の若者から70歳代の高齢者までの112名から手首運動(指標追跡運動)を記録した。そして、小脳疾患やパーキンソン病などの神経疾患予備群も特定できる症例数を増やしている。特に、手首による指標追跡運動においては動きの原因である筋活動も同時に計測することにより、指標追跡運動における高齢者と若者の制御方策の違いや各疾患の病態を筋シナジーの概念に基づいて分析している。また、加齢に伴う脳の運動制御メカニズムの変化を分析するのに、片側の手首による運動だけではなく、両手のの動きまで分析できるシステムの開発を韓国Handong大学と日本の群馬高専との共同研究として行っている。
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今後の研究の推進方策 |
若者から70歳代の高齢者までの加齢に伴う脳の運動制御メカニズムの変化を随意的な運動要素である予測制御とフィードバック制御の精度評価に加え、非随意的な運動要素であるマイクロステップス要素の評価も行う予定である。特に、両側の手首による指標追跡運動を調べることにより、6Hz前後の小刻みな階段状運動であるマイクロステップス要素が神経疾患の初期診断や薬物前後の評価に貢献できるパラメータであるかを調べる予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
研究代表者の所属機関が東京都医学総合研究所から公立小松大学に変わり、研究実施環境の整備などによって本研究が予定より遅延されたので、連携病院への出張や病院連携研究の支出が予定より減少し、補助事業の目的をより精緻に達成するための研究遂行期間延長を希望しながら研究費の残額を残した。 そして、研究遂行期間の延長された4年目である令和2年度には、石川県にある医療施設や高齢者の介護施設を新しい共同研究先として開拓し、多くの被験者から随時記録を行えるように手首システムを検査室に常備する予定である。特に、連携先のスタッフが独自にデータを取得できるように指導する予定であり、定期的に出張し、スタッフの技量と記録システムのチェックを行う予定である。また、これまでの研究成果を学会に発表するための費用や連携病院への出張、英文論文校閲代、論文印刷代として残額の研究費を使用する予定である。
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