研究課題/領域番号 |
17K01500
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研究機関 | 神戸大学 |
研究代表者 |
井澤 和大 神戸大学, 保健学研究科, 准教授 (10736185)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | Maximum Phonation Time / 効用値 / 睡眠の質 |
研究実績の概要 |
超高齢社会に伴い心大血管疾患者は増加している。そのため、疾患発症後の社会保障費の増加および要介護高齢者の増加が懸念される。また、心大血管疾患に他の疾患を併存あるいは重複することにより、身体機能や身体活動の低下をもたらす可能性がある。ゆえに、心大血管疾患患者の介護予防を積極的に推進していく上でも、身体機能および身体活動の実態について明らかにする必要があった。 これまでの検討では、サルコペアの有無により身体機能や身体活動の差異、そして年齢層による効用値に差異があることが明らかとなった。しかし、それらの継時的な変化については明らかではなかった。そこで、平成30年度は、まず、心大血管患者における年齢層別の身体機能および効用値の継時的変化について調査した。具体的な身体機能指標には、運動耐容能と相関関係にある最長発生持続時間(Maximum Phonation Time; MPT)が用いられ、その年齢層別の実態について調査された。また、効用値の指標には、健康関連Quality of lifeの指標であるSF-36より算出されるSF-6Dが用いられた。さらに、維持期における睡眠の質と効用値との関係についても調査された。 まず、高齢心大血管患者の退院後、回復期におけるMPTと効用値について年齢層(65歳以上の高齢群と65歳未満の壮年群)により選別された。その後、両群における各指標について比較検討された。その結果、退院後、回復期心臓リハビリテーション開始時において、高齢群は壮年群に比し、MPTおよび効用値は低値を示すことが明らかとなった。 次に、回復期におけるそれらの継時的変化について調査された。その結果、両群ともに向上することが明らかとなった。最後に、維持期における睡眠の質と効用値には関係があることが明らかとなった。 以上のことから、今年度は、年齢層別によるMPTと効用値の差異と継時的変化および睡眠の質との関係について明らかとなった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
これまでの検討では、横断的研究として、サルコペアの有無により身体機能や身体活動に差異があることが明らかとなっていた。しかし、他の交絡因子、例えば、年齢層が主要アウトカムにどのような影響を及ぼすか?については、縦断的には検討されていなかった。 平成30年度は、当初の計画である、心大血管患者における身体機能指標および効用値について、年齢層に着目して、縦断的に調査することが可能であった。この身体機能指標として、簡便に測定可能であり、また心疾患患者の運動耐容能とも正の相関関係にある最長発生持続時間、Maximum Phonation Time (MPT)が用いられた。 退院後の回復期リハビリテーション開始時において、高齢群は壮年群に比し、MPTは低値を示されたものの、回復期のリハビリテーションによって、ともに向上することが明らかとなった。また、対象者の健康に関する主要アウトカムとして、健康関連Quality of lifeの指標であるSF-36より算出されるSF-6Dについても年齢層別により差異があること、また回復期には65歳以上と65歳未満の両群ともに向上することが示された。さらに、維持期における睡眠の質と効用値との関係についても明らかとなった。 今年度の研究成果としては、上記について研究成果を示すことが可能であった。 以上より、現在までの進捗状況としては、本研究は、概ね順調に進んでいるものと考えられる。
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今後の研究の推進方策 |
平成30年度における研究成果は、心大血管患者における身体機能指標および効用値について、年齢層に着目して縦断的に調査された。 フレイル診療ガイド2018版によると、心不全患者におけるフレイルの頻度は19~40%とされている。フレイルに関連する要因の一つとして栄養状態がある。栄養状態が高齢心大血管疾患患者の身体機能のみならず、日常生活活動や再入院などについてどのような影響を与えるのか?については未だ明確ではない。そのため、今後の研究としては、心大血管患者における栄養状態に着目し、入院、退院後の日常生活活動や再入院などの予後について長期的に検討をしていく必要がある。また、心臓外科術後におけるせん妄や心不全患者における腎臓機能がどの程度、患者の身体機能、身体活動、日常生活活動および再入院や生命予後に与える影響についても未だ不明な点も多い。 以上のことから、平成31年度の研究の推進方策としては、上記を踏まえ、さらなる検討を要するものと考えられる。
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