研究課題/領域番号 |
17K01502
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研究機関 | 神戸大学 |
研究代表者 |
井上 順一朗 神戸大学, 医学部附属病院, 理学療法士 (50437472)
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研究分担者 |
秋末 敏宏 神戸大学, 保健学研究科, 教授 (90379363)
酒井 良忠 神戸大学, 医学研究科, 特命教授 (90397802)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | がん性疼痛 / 理学療法 / 経皮的電気刺激治療 / オピオイド使用量 / 身体機能 / 身体活動量 / QOL |
研究実績の概要 |
がん性疼痛はがん患者のQOLを大きく損なう症状の一つであり、適切な鎮痛剤の使用によりコントロールできると報告されている。しかし、オピオイドなどの薬物療法では、嘔気・嘔吐、眠気、便秘、呼吸抑制などの副作用により患者の日常生活やQOLに悪影響を及ぼすリスクが高い。近年、非侵襲的で安価な鎮痛手段として経皮的電気刺激治療(TENS)ががん性疼痛の軽減に有効であることが報告されている。本研究では、がん性疼痛を有する患者に対して、従来の理学療法のみ実施する対照群と、理学療法+TENSを実施する介入群を比較することにより、がん性疼痛に対するTENSの鎮痛効果を検証するとともに、疼痛の緩和に伴う患者の身体活動量、身体機能、QOLの改善への有効性について検証することを目的としている。 平成29~30年度において、がん性疼痛を有する患者24名(男性17名、女性7名、平均68.3±10.3歳)をリクルートし、介入群12名と対照群12名にランダムに割り付けを行い、研究を実施した。オピオイド使用量、疼痛の程度、身体活動量(平均歩数)、握力、膝伸展筋力、QOL(EORTC QLQ C-30)を評価項目とし、baseline、1週後、2週後、3週後に評価を実施した。1週後、2週後、3週後の各評価項目のbaselineからの変化率を算出し、二元配置分散分析にて2群間の比較を行った。結果として、オピオイド使用量は、介入群で1週後、2週後、3週後に有意に減少した。身体活動量と握力は介入群で1週後、2週後、3週後に有意に向上し、膝伸展筋力は3週後に有意に向上した。疼痛の程度とQOLには有意な差は認めなかった。 現在のところ、がん性疼痛に対してTENSを実施することで、オピオイド使用量が減少し、身体活動量が増加し、身体機能が改善していることから、がん性疼痛への補助療法の一つとしてTENSの有用性が示唆されている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
研究期間内に研究対象として、対照群50名、介入群50名、合計100名のリクルートが目標であるが、平成29~30年度にリクルートできた研究対象が、介入群12名、対照群12名、合計24名(24%)にとどまっている。その理由として、平成29~30年度に当院リハビリテーション科およびリハビリテーション部に紹介されたがん患者のうち、本研究の対象となるがん性疼痛を有する患者は重度な麻痺症状を呈する脊椎転移の患者や意識レベル低下もしくはせん妄を呈している患者が多く、そのほとんどが歩行困難や意思疎通困難であったため本研究より除外となってしまったことが挙げられる。
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今後の研究の推進方策 |
平成29~30年度はリクルートできた対象が目標には届いていないものの、研究結果としては当初目的としていたがん性疼痛に対してTENSを実施することによりオピオイド使用量が減少し、身体活動量が増加、身体機能が改善するという良好な成果が得られている。そのため、平成31年度に、いかに多くの対象者をリクルートできるかが課題となる。現在、リクルートは主にリハビリテーション科およびリハビリテーション部が中心となって行っているが、疼痛コントロールが必要ながん患者に対応している緩和ケアチームやがん治療を主に行っている腫瘍・血液内科、放射線腫瘍科ともさらに密に連携をとり、がん性疼痛を有する対象者のリクルートを推進していく予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
平成30年度に購入予定であった備品(TENS機器およびパッド等)を一部購入せずに、平成30年度は当該施設にて以前より所有していた機器および平成29年度に購入した機器を用いて研究を行った。平成31年度は追加購入が必要な機器があるため、新規購入予定である。 また、海外での学会にて成果発表予定であったが、平成30年度は海外での発表を行わなかった。平成31年度は海外にて成果発表を行う予定であり、その旅費交通費として使用予定である。
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