研究実績の概要 |
がん性疼痛はがん患者のQOLを大きく損なう症状の一つであり、適切な鎮痛薬の使用によりコントロールできるとされている。しかし、オピオイドなどの薬物療法では、嘔気・嘔吐、眠気、呼吸抑制などの副作用により患者の日常生活やQOLに悪影響を及ぼすリスクが高い。近年、非侵襲的で安価な鎮痛手段として経皮的電気刺激治療(TENS)ががん性疼痛の緩和に有効であることが報告されている。本研究では、がん性疼痛を有する患者に対して、理学療法のみ実施する対照群と理学療法+TENSを実施する介入群を比較することにより、がん性疼痛に対するTENSの効果を検証するとともに、疼痛の緩和に伴う患者の身体活動量、身体機能、QOLの改善への有効性について検証することを目的とした。 がん性疼痛を有する患者30名(男性20名、女性10名、平均66.7±10.3歳)を介入群15名と対照群15名の2群にランダムに割り付けを行った。オピオイド使用量、疼痛の程度(最大・平均)、身体活動量、握力、膝伸展筋力、QOL(EORTC QLQ C-30)をbaseline、1週後、2週後、3週後に評価した。統計解析は、群と時間の交互作用を明らかにするために反復測定二元配置分散分析を行った。 結果として、オピオイド使用量(F=5.18, p<0.01)、疼痛の程度(最大)(F=2.80, p<0.05)、疼痛の程度(平均)(F=3.51, p<0.05)、身体活動量(F=11.54, p<0.01)、握力(F=15.68, p<0.01)、膝伸展筋力(F=9.85, p<0.01)に群と時間に有意な交互作用を認めた。 がん性疼痛に対してTENSを適用することにより、疼痛が緩和するとともにオピオイド使用量が減少し、身体活動量と身体機能に改善が認められたことから、がん性疼痛に対するサポーティブケアの一つとしてのTENSの有用性が示唆された。
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