研究課題/領域番号 |
17K01505
|
研究機関 | 広島大学 |
研究代表者 |
新小田 幸一 広島大学, 医系科学研究科(保), 名誉教授 (70335644)
|
研究分担者 |
高橋 真 広島大学, 医系科学研究科(保), 教授 (50435690)
|
研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2022-03-31
|
キーワード | 高齢者 / 睡眠 / 極軽負荷運動介入 / 身体機能 / QOL |
研究実績の概要 |
地域に居住する高齢者に対して行った,4週間にわたる起床後の運動介入で採用した極軽負荷運動による睡眠への効果を,2020年度は自覚的眠気と身体機能・QOLとの関連性,睡眠の質的側面と身体機能との関連性を中心に検討した.その結果,1)日中の眠気を示すEpworth Sleepiness Scale (ESS)は,起立-歩行テスト (Timed Up and Go test: TUGT)と機能的リーチテスト(Functional Reach test: FRT)でみた身体の動的および準動的機能との間には,介入前から介入4週後まで相関を認めないが,QOLとの間には介入2週後から中等度の相関を示すことが明らかになった,さらに,2)介入前の睡眠効率が85%以上の睡眠効率良好群と85%未満の非良好群間の睡眠効率の高低関係は介入4週後まで継続し,3)TUGTは介入4週後まで両群間に差を認めない一方で,睡眠効率良好群のFRT距離は,介入4週後には非良好群よりも長くなることが明らかになった. 以上のことに加え,並行して行った研究で,高齢者を含む変形性股関節症者は歩行中の股関節にstiffness(かたさ)を有すため,関節運動の協調性が十分ではないことを確認した.高齢者にはそのときは非症候性ではあっても,その後に症候性のかかる疾患の罹患へと移行する者も存在するとされている.このため,起床後の極軽負荷運動の習慣づけは,高齢者の関節に柔軟性を与えて動作中の痛みの出現を抑え,良好な睡眠を導くとともに,転倒等の危険姓を回避するための1つの戦略としても有効である可能性が示唆された.このような多角的な観点の下に,高齢者が自身の睡眠状況と身体機能の有り様を認知し,それらを健康な日常生活へと反映させることが重要と考え,被験者ごとの評価結果を示す資料を作成し,各被験者へ送付できるよう準備を整えた.
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
2020年度は新型コロナウイルスが未収束のまま経過して活動が制限され,学術集会等への参加による関連領域の研究者との直接的な接触による情報収集を図ることが困難であった.加えて,介入後の長期にわたる正確な経過情報を被験者から直に取得することは重要であるが,かかる状況下ではこれをなし得なかった.このため,結果に対する考察に反映させる適切な情報を十分には取得するにいたらなかった.
|
今後の研究の推進方策 |
今後も直ちには新型コロナウイルスの収束は見通せない状況である.このため,2021年度はオンラインないしはハイブリッドでの開催が予定される学術集会での研究成果の発表と周知のほか,同様の手法で開催されるセミナー等へ参加して情報の収集に努める.そしてかかる状況を踏まえ,被験者からの経過情報は電話や文書等による通信手段での取得を検討する. これらの対応により得られた情報とこれまで得られている情報を下に,被験者特性の階層化等の手法も取り入れることによって,高齢者の睡眠に対する起床後の極軽負荷運動の介入効果をより明確にできるように研究を進める.
|
次年度使用額が生じた理由 |
2020年度は新型コロナウイルスの感染回避のため,研究に関わる情報収集,被験者からの経過情報取得等での諸活動が制限されたことにより次年度使用額が生じた.2021年度は,オンラインあるいはハイブリッドで開催される関連研究領域の各学術集会での積極的な成果発表やセミナー等への参加と情報取得を図りながら,これらに必要な参加費・交通費等の諸経費,研究協力者からの助言取得等に要する経費のほか,通信費等に有効に活用する.
|