ワーク・ライフバランスの意識や高齢者人口の増加に伴い,健康問題の一つとして睡眠への関心が高まってきている.本研究は,4週間にわたる起床後の極軽負荷運動介入が,地域に居住する高齢者にもたらす睡眠適正化への可能性,運動機能・QOLへの効果を明らかにすることを目的に行ったものである. 【最終年度の成果】介入前の睡眠効率が85%未満の睡眠効率非良好群に分類される高齢者であっても,運動介入後には睡眠効率が向上する例が確認された.また,採用した運動は90%を上回る実施率を示し,少なくとも4週間の運動継続が良好に行われていたことが示唆された.これまでに得られた結果を,第29回日本健康教育学会学術大会にて口述発表した.研究協力への還元として,先行研究の評価指標も参考値として織り込んで,対象者に各自の結果を文書にして提供した.対象者からは自身の評価結果を実際に見てみて,「運動の重要性が分かった」「運動を始めるようになってからだの調子がよい」「これからも続けて運動する」など,採用した極軽負荷運動を前向きに捉える反応が得られた. 【研究期間全体を通じた成果】地域に居住する22人の高齢者を対象とした朝の起床後に行う極軽負荷運動は,関節可動域の拡大や筋力増強,客観的な睡眠指標の向上には著明な効果を認めなかったものの,運動介入1週後には日中の眠気を和らげ,睡眠効率の低い高齢者では睡眠効率を向上させる可能性も示された.一方,起立-歩行動作の所要時間と外乱応答への姿勢回復の即応性には4週後に効果が現れ,高い運動実施率からも裏付けされるように,たとえ極軽負荷でも運動継続によって,高齢者の転倒予防への効果が少なからず期待される結果を得た.さらにQOLは運動介入2週後には向上し,日中の眠気の改善も相まって,早朝の極軽負荷運動は地域に居住する高齢者をメリハリの効いた活動的な日常生活へと誘導するものと思われた.
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