研究課題
平成29年度は,間質性肺疾患患者に対する高流量鼻カニュラ(high-flow nasal cannula, HFNC)による酸素投与の運動時実施可能性と安全性について検討した。病状が安定している重症間質性肺疾患患者7例(特発性肺線維症5例,膠原病関連間質性肺疾患2例)を対象に,HFNCシステムとして加温加湿器搭載型フロージェネレータ AIRVO2(Fisher & Paykel Healthcare社製)を使用して,運動療法実施の際に評価を行った。上記の検討目的のため,今回は入院患者を対象に,安静時とベッドサイドでの足踏み運動や歩行練習を評価の対象とした。運動療法は,患者毎に実施している運動強度と回数(あるいは時間)に従い,酸素投与の設定条件は濃度60%とし,流量は30L/minから開始,対象者が許容できる範囲で増量した。その間,呼吸数,酸素飽和度(SpO2),心拍数,自覚症状(呼吸困難,鼻腔や顔面の不快感),および有害事象(運動中の上記自覚症状の増強,咳嗽の出現,気胸・縦隔気腫の発生など)をモニター,評価した。その結果,安静時と比較して運動療法実施時で呼吸数,心拍数は上昇したが,許容範囲内であり,5例ではSpO2を90%以上に維持することが可能であった。2例は酸素濃度を70%まで上昇させることでSpO2 90%を保つことができた。また,HFNCによる自覚症状の増強,有害事象の出現は皆無であった。
2: おおむね順調に進展している
加温加湿器搭載型フロージェネレータの納品が遅れ(2017年10月),当該年度の目標症例数の10例には至っていないが,現在までの研究の達成度については,安全性ならびに実施可能性の確認が行えており,おおむね順調に進展していると自己評価する。実施可能性についても現時点では問題はないと判断できた。
予定通り,平成30年度は「HFNCが間質性肺疾患患者のEIDと運動能力に及ぼす即時効果」ならびに,「HFNCを併用した運動療法の短期および長期効果の検討」に着手する。まず,前者について検討し,安全性について十分に確認をしながら進めていく。また,引き続き関連学会に参加し,情報収集を行う予定である。昨今,間質性肺疾患の治療や管理の進展は大きく,特にHFNCの臨床応用についても知見が重ねられている。それとともに,研究の意義や方法論についても適宜,再確認を行っていく。
(理由)記録用紙(マルチペーパー)購入に予算を使用できていないため。(使用計画)上記,購入するとともに,計画に従って予算を執行する。
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すべて 雑誌論文 (5件) (うち査読あり 5件、 オープンアクセス 2件) 学会発表 (8件) (うち国際学会 3件、 招待講演 5件) 図書 (4件)
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