研究課題
本研究では,間質性肺疾患患者に対して運動時に高流量鼻カニュラ(high-flow nasal cannula, HFNC)システムを用いた酸素投与が運動時の低酸素血症や呼吸困難に及ぼす即時効果,ならびに日常生活活動(ADL)への影響について検討してきた。当該年度は前年度に引き続き,理学療法を実施している入院中の重症間質性肺疾患患者に対象を特定し,HFNCシステムによる酸素投与下でのベッドサイド低強度運動療法実施の短期効果をADLの到達度と期間から評価した。当院呼吸器内科に入院治療中で,HFNCシステムによる酸素投与が行われている間質性肺疾患患者を対象に,ベッドサイドで下肢の筋力トレーニング,起立運動,立位での足踏み運動による運動療法プログラムを理学療法士の監視下にて実施,継続した(運動時の酸素飽和度[SpO2]と呼吸困難[修正Borg scale],心拍数をモニターしながら約20分間)。なお,SpO2が85%以下,呼吸困難が5以上,心拍数が120bpm以上を中断の基準とした。評価項目は,ポータブルトイレおよび病棟トイレが使用可能となるまでの期間,退院時ADL状況(Katz Index)を評価し,過去年度の同疾患群(HFNCシステム非使用)の状況と比較した。新型コロナウイルスによる感染拡大の影響から入院患者の診療が制限された状況での実施であったが,8例を対象に検討した結果,運動療法プログラムを問題なく進めることができ,ポータブルトイレおよび病棟トイレが使用可能となるまでの期間は短縮,ADLも比較的維持された状況で自宅退院となり,本プログラムの有用性が示唆された。
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