敗血症患者は不安定な全身状態のため,人工呼吸器をはじめ種々の生命維持装置や投薬治療から不活動となり全身に様々な悪影響を及ぼす.全身性炎症により急速な筋萎縮が誘発されるため,早期離床による筋機能の低下予防,ひいては身体運動機能の維持,向上が必要不可欠である.しかし,重症例においては積極的な離床や筋収縮運動を実施できる状態ではない.最近,電気刺激による他動的な筋収縮運動が適用されているが,その効果に関しては一定していない.本研究の目的は,敗血症患者に対する電気刺激療法の効果に関して,筋蛋白分解の推移をその指標に加えて検討することである.今回,電気刺激装置を使用し,刺激部位:両側下肢,刺激強度:45Hz; 400-μs,通電時間12秒,休止時間6秒,強度40-80mA,実施時間:1セッション60分間,実施頻度:週に5回以上で実施した.症例数は少ないが敗血症患者で検討した結果,筋厚および筋力の低下とは逆に尿中3-MHは上昇し,筋蛋白分解の亢進を認めた.敗血症患者は炎症によって代謝は亢進しているが,筋蛋白分解の推移に関しては不明であり,これらの特徴を捉えることと,さらにはNMES併用時に蛋白分解の推移が判明すれば,NMES適用の意義を明らかにできる可能性が示唆された. しかし,装置が高価で,機器の選定ならびに手技の習得に時間を要しデータ収集の準備が遅れたこともあり,目標症例数には到達できなかった.さらに3-MHの変化に関する報告もなく,まずは検証が必要で3-MHの探索的研究より開始した.その後,NMESでの介入を行う予定だったが,全身状態の悪化に伴い研究の中止や,未曽有の新型コロナウイルス感染症による病院機能の縮小に伴い症例を蓄積できなかった.
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