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2017 年度 実施状況報告書

筋浮腫の治療戦略を探る-リンパ管形成とそのメカニズムより

研究課題

研究課題/領域番号 17K01511
研究機関大分大学

研究代表者

紀 瑞成  大分大学, 福祉健康科学部, 講師 (60305034)

研究分担者 河上 敬介  大分大学, 福祉健康科学部, 教授 (60195047)
研究期間 (年度) 2017-04-01 – 2020-03-31
キーワード免疫組織化学 / リンパ管内皮細胞 / 内皮細胞増殖因子(VEGF-C/-D) / リンパ管新生 / 筋萎縮 / 筋浮腫
研究実績の概要

外科術後の固定や長期臥床等による不動状態は、筋萎縮とともに筋浮腫を引き起こす。この筋浮腫は関節の可動域制限や日常生活活動の低下を引き起こし、その治療や予防は理学療法にとって重要な課題である。筋中組織液の汲み上げは血管系還流に加えリンパ管系が重要な役割を担っている。よって、筋浮腫は不動によるリンパ管系の何らかの機能低下が原因と考えられるが、その治療戦略はもとより、病態像やそのメカニズムすら不明な点が多い。そこで、筋萎縮モデルマウスを用いて、不動による筋萎縮・筋浮腫と筋内リンパ管系の分布との関係、およびそのメカニズムを検証する。更に、我々の開発した定量的運動負荷装置を用いて、運動刺激によるリンパ管の形態応答や最適な運動刺激方法を明らかにするとともに、そのメカニズムを検証する。該当年度では、マウス尾部懸垂モデルを作製し、一般的な組織学的観察に加えリンパ管の特異的マーカーであるLYVE-1、Podoplaninを用いた免疫組織学的観察により、リンパ管の分布、大きさ及び密度などの検証を行った。また、リンパ管新生の指標としてVEGF-C/-Dなどを、リンパ管新生抑制の指標として Endostatin の活性を Western blotting法による解析した。その結果、骨格筋の萎縮時には、リンパ管の総数や筋線維あたりのリンパ管数は変化しないが、単位面積あたりのリンパ管数が増加することが判明した。一方、この現象に関しての生化学的な検証については、VEGF-C/-D蛋白の発現が認められた。現在萎縮筋に対する運動刺激がリンパ管の形態応答に及ぼす影響を検証している。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

当該年度の目標は不動による筋萎縮と筋内リンパ管系分布との関係を検証することである。そのために、2~4週間の尾部懸垂により筋萎縮モデルを作製した。筋萎縮群マウスの足関節底屈筋群を採取し、一般的な組織学的観察に加え、LYVE-1 や CD 31 などを用いた免疫組織学的検証により、萎縮に伴うリンパ管や毛細血管の分布や数、構造などの変化を検証した。また、リンパ管増殖因子であるVEGF-C などを、リンパ管新生抑制の指標として Endostatin などの活性を Western blotting や RT-PCR による生化学的な検証を実施した。電子顕微鏡や免疫電子顕微鏡を用いて、リンパ管内皮細胞間の接合や細胞小器官の変化など、正常とは異なる所見の有無を検証中である。以上、本課題はおおむね順調に進展していると考える。

今後の研究の推進方策

計画通り、我々の開発した定量的運動負荷装置を用いて、萎縮筋に対する運動刺激がリンパ管の形態応答に及ぼす影響とそのメカニズムを検証する。運動刺激による回復促進効果の有無、その評価には、リンパ管の大きさ、密度に加え、リンパ管内皮細胞の特異的マーカーとして重要なLYVE-1、Prox-1、Podoplaninを用いる。萎縮からの回復促進効果のある、運動トレーニングとリンパ管形成との関係については、リンパ管新生の指標として、特にVEGF-C/VEGFR-3系の活性制御を解析する。抗増殖細胞核抗原(PCNA)や抗Ki-67モノクローナル抗体を用いて細胞増殖活性を評価し、さらに、筋浮腫に対する運動療法時に細胞間質にリンパ管増殖因子のmRNA発現量の測定を行う。

次年度使用額が生じた理由

包埋用モールドなどの品物は輸入品なので配送に時間がかかり、年度内に納品が困難であるために、わずかに残額が生じた。前年度予定の実験用品の購入に使用する。

  • 研究成果

    (6件)

すべて 2017

すべて 雑誌論文 (1件) (うち査読あり 1件) 学会発表 (5件)

  • [雑誌論文] Post-injury stretch promotes recovery in a rat model of muscle damage induced by lengthening contractions2017

    • 著者名/発表者名
      Mori Tomohiro、Agata Nobuhide、Itoh Yuta、Inoue-Miyazu Masumi、Mizumura Kazue、Sokabe Masahiro、Taguchi Toru、Kawakami Keisuke
    • 雑誌名

      The Journal of Physiological Sciences

      巻: - ページ: -

    • DOI

      10.1007/s12576-017-0553-9

    • 査読あり
  • [学会発表] 細胞移植治療後のデュシェンヌ型筋ジストロフィー症モデルマウスに対する等尺性収縮トレーニングは、移植による治療効果を促進する2017

    • 著者名/発表者名
      竹中菜々、伊東佑太、河上敬介、櫻井英俊
    • 学会等名
      第52回日本理学療法学術大会
  • [学会発表] 萎縮筋におこる筋浮腫の病態とその理学療法の確立に向けて ~リンパ管に着目して~2017

    • 著者名/発表者名
      川島隆史
    • 学会等名
      日本理学療法士協会 第2回基礎理学療法学 夏の学校
  • [学会発表] 腸間膜脂肪組織と皮下脂肪組織の決定的機能差2017

    • 著者名/発表者名
      千葉政一、永田芙由美、董暁敏、酒井久美子、紀瑞成、伊奈啓輔、藤倉義久
    • 学会等名
      第73回日本解剖学会 九州支部学術集会
  • [学会発表] 腸間膜脂肪の新規な臓器特性:臨床応用を目指した皮下脂肪との機能差の解明2017

    • 著者名/発表者名
      千葉政一、紀瑞成、董暁敏、伊奈啓輔、藤倉義久
    • 学会等名
      第123回日本解剖学会総会・全国学術集会
  • [学会発表] The potential role of simvastatin in tumor lymphangiogenesis2017

    • 著者名/発表者名
      紀瑞成
    • 学会等名
      第123回日本解剖学会総会・全国学術集会

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公開日: 2018-12-17  

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