研究課題
長期臥床や外科術後の固定等による不動状態は、筋萎縮とともに筋浮腫を引き起こす。萎縮筋の代謝産物などを含む組織液の回収には、リンパ管をはじめ、筋ポンプ作用に代表される力学刺激が重要と考えられる。しかし、廃用性筋萎縮のような骨格筋の病態時のリンパ管の分布や役割については不明である。本研究の目的は、筋萎縮と筋内リンパ管系分布との関連性を検証し、運動刺激によるリンパ管の形態応答や最適な運動刺激方法を明らかにするとともに、そのメカニズムを検証することである。具体的には、1)筋萎縮期間の違いによる筋力・筋線維横断面積(CSA)・単位面積あたりのリンパ管数の変化について明らかにする。2)定量的運動負荷装置を用いて、萎縮筋に対する運動刺激がリンパ管の形態応答に及ぼす影響とそのメカニズムを検証する。3)筋萎縮からの回復促進のための最適な運動刺激方法を探る。本研究では、尾部懸垂(TS)によるマウス筋萎縮モデルを用いて、下腿筋力・CSA・リンパ管数・リンパ管新生因子などを解析し、萎縮筋に対する運動刺激がリンパ管の形態応答に及ぼす影響およびそのメカニズムを検証した。リンパ管の総数および筋線維あたりのリンパ管数はTS 4週に有意な低値を示した。さらに、リンパ管内皮細胞増殖因子であるVEGF-C/-Dとそれらの受容体VEGFR-3などの発現は筋萎縮により変化することが示唆された。なお、最大等尺性収縮時の足関節底屈トルク値はTS 2週および4週に減少したが、低周波電気刺激によるCSAの増加が観察された。以上のことより、本研究は精度の高い運動負荷量設定を可能にした装置を用い、運動量と効果と生化学的結果との関連性の検証を可能にし、科学的根拠に基づく適切な理学療法の解明が可能となった。特に、萎縮筋におけるリンパ管系の分布・構造・機能的応答を明らかにし、その治療戦略の開発につながることが期待される。
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