急激な負荷変動であるインターバル負荷運動(HIT)に対し,正弦波状でかつ負荷の立ち上がりが緩やかな運動様式として正弦波状負荷運動(SIN) がある.本研究では,総運動量,最大運動強度同一条件のもと,SINとHITの経時的な循環応答の変化の違いを検討した.SINはHITよりも経時的な変化による血圧,心拍数の上昇は有意に低値であった.このことから,SINはHITよりも血圧,心拍数の上昇を抑制しながら運動が可能であることが示唆された.また有疾患患者への運動処方における至適強度条件として,負荷前後における活動筋に対する刺激量あるいは血管機能,HITにおける酸化ストレスの変化にも着目する必要性から,SINとHITの運動前後における血流依存性血管拡張反応(FMD)および酸化ストレスの変化を比較検討した.FMDの変化では差はないが, 酸化ストレスではSINがHITより低値であったことから,両運動様式では血管内皮機能に及ぼす影響は同様であるが,酸化ストレスでみた場合にはSINがより血管機能に対して有効である可能性が示唆された.一方,FMDや酸化ストレスの変化は,交感神経活動に依存することが先行研究より明らかであり,両運動様式で交感神経活動の程度に違いが生じることが予想された.そこで,血中カテコラミン濃度の経時的な変化を比較検討した結果,アドレナリン値は両運動様式で同様の変化であったが,ノルアドレナリン値はSINがHITより有意に低値であった.SINでの交感神経活動は,HITより抑制されることが示唆された.こうした運動様式間での交感神経活動の差は,最大運動強度にかかる時間やエネルギー基質を要因とする可能性が高く,本研究における今後の検討方針として,エネルギー基質,特に両運動様式における骨格筋への糖取り込みの差が骨格筋血流や血管内皮機能にもたらす影響について引き続き検討したいと考える.
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