研究実績の概要 |
申請者は最近,運動学習向上に対して中枢神経系の運動に伴う一過性の興奮性上昇とリズム適応動作が重要であることを見出し一連の研究を行ってきた.これらの知見を応用することで、中枢神経系障害や整形外科疾患から生じる筋緊張異常と円滑な関節運動を改善できるのではないかという仮設のもと研究を実施している。ここまで,主動作筋-拮抗筋の協調性改善にかかわる脳可塑的変化を誘導する制御機構の解明とその有効な方法を確立することを目的とするとともに具体的な研究実践を行っている.今年度の研究実績としては,リズム変化が及ぼす行動学的な運動偏位について各種リズムと運動記憶とのズレについての検討を行った.当研究では,長いリズム間隔と短い間隔の差として長い間隔のリズムには誤差偏位が大きく,学習において相違する効果があることが認められていた(Numata,et al,2019).歩行を題材として歩行リズムの変調パターンと一定リズムの歩行パターンとの比較を行い,歩行リズムの変調が歩行練習にとって重要であることの検証を行った(土田,他,2019).さらに,運動学習においてその運動遂行に対して容易な設定と困難な設定に関する相違をリズム運動を中心に行った.その結果,運動設定は難しければ良いというわけではなく,容易な状態を選ぶことで脊髄運動中枢の適応的な興奮性を得られることを明らかにした(浅井 他,2019).また,運動学習の左右転移において中枢神経系の興奮性における特異性を明らかにし,学習における右左特性に対して言及した(Oosawa,etal.2019).さらに,運動施行を行う中で,随意的な発動があるかないかでは,運動発動が生じることによって初めて中枢神経系の興奮性が上昇することを明らかにした(Sugawara etal,2019).以上のように基礎的運動制御とリズム運動という明確な条件設定の中で検討を行った.
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