研究課題/領域番号 |
17K01526
|
研究機関 | 札幌医科大学 |
研究代表者 |
菅原 和広 札幌医科大学, 保健医療学部, 助教 (10571664)
|
研究分担者 |
伊藤 文人 北海道大学, 保健科学研究院, 客員研究員 (00722307)
小島 翔 新潟医療福祉大学, 医療技術学部, 助教 (10780330)
藤井 俊勝 東北福祉大学, 健康科学部, 教授 (70271913)
大西 秀明 新潟医療福祉大学, 医療技術学部, 教授 (90339953)
|
研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
|
キーワード | 脳磁図 / 随意運動 / 体性感覚誘発磁界 / 感覚抑制 / 疼痛抑制 |
研究実績の概要 |
我々はこれまで脳磁場計測装置(Magnetoencephalography; MEG)を用いて,末梢神経である正中神経を刺激時に随意運動強度の増加に伴い,体性感覚誘発磁場(Somatosensory evoked fields; SEF)が減弱することを報告した(Sugawara K, et al. Exp Brain Res, 2016).2017年度では本研究では以上の研究を発展させ,随意運動時における末梢感覚入力量変化に着目し,MEGを用いて皮膚への疼痛刺激前後の運動関連脳磁場および体性感覚誘発磁場を計測することとした.これにより,疼痛抑制機構の基礎をなす,皮膚刺激時における脳内での体性感覚抑制機構について明らかになると考えた. 本申請課題で対象とした疼痛刺激は皮膚上への刺激を想定していたため,まずはじめに皮膚への感覚刺激と随意運動を組み合わせることによりSEFに変化が生じるかを確認した.皮膚刺激には示指へのRing電極を使用し,感覚閾値の3倍の刺激強度を採用した.随意運動には無負荷の示指伸展等尺性収縮を用い,等尺性収縮中に皮膚電気刺激を行うことでSEFの減弱について検討した.また,非刺激部位の運動によってもSEFの減弱が生じるかについても検討する目的で,示指への電気刺激中に小指の伸展等尺性運動を行った.Control条件(安静)と比較し,示指および小指伸展等尺性運動中にSEFが減弱する傾向が見られた.刺激該当部位の運動によって感覚抑制が観察されることはすでに報告されているが,本研究では非該当部位の運動によってもその傾向が見られる結果が得られた.先行研究において,末梢刺激に対する注意によって,一次体性感覚野および二次体性感覚野の活動が変化することから,本結果についても運動と感覚入力の注意の配分によって変化が生じた可能性が示唆された.
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
平成29年度では,Ring電極を用いた皮膚刺激時における随意運動がSEFに及ぼす影響を明らかにすることができた.しかし,その刺激強度や運動強度についてはまだ検討の余地があると考えられ,次年度以降に検討する必要性があると思われる.また,疼痛刺激として使用する予定であった刺激装置が販売中止となってしまい,現在後継機器について調査している段階である.そのため,現時点では随意運動による疼痛抑制については直接的な計測はできていない.今後,共同研究者と協力しながら刺激装置の再検討と,随意運動の運動強度や運動の種類についても検討していく予定である.
|
今後の研究の推進方策 |
これまで実施した研究において,皮膚刺激時の一次体性感覚野の活動についてのデータをある程度取得することができた.また,計測機器の特性やノイズレベルについての知見も得ることができた.平成30年度以降では,これまで通りMEGを用いて随意運動による感覚抑制についての調査を進め,それと同時に機能的磁気共鳴画像法(fMRI)を用いることで運動と感覚抑制機構の詳細を明らかにできると考えられる.その一方で,各脳計測機器のシールドルーム内で使用できる刺激装置が限局されるため,平成29年度に得られた知見を基に刺激装置に工夫を加える必要があると考えられる.
|
次年度使用額が生じた理由 |
購入予定であった刺激装置が販売中止となってしまい,該当年度に購入することができなかった.今後,後継品が販売予定であるため,その購入に費用と充填したいと考えている.また,消耗品の購入も予定より小額で済んだことも影響していると考えられる.
|