研究課題/領域番号 |
17K01527
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研究機関 | 国際医療福祉大学 |
研究代表者 |
後藤 純信 国際医療福祉大学, 福岡保健医療学部, 教授 (30336028)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 半側空間失認 / 立体感覚刺激 / 誘発電位・誘発脳磁界 / 経頭蓋交流電流刺激 / 安静時機能的MRI / 脳波周波数解析 / γ帯域律動波 / 経頭蓋直流電流刺激 |
研究実績の概要 |
平成30年度は、平成29年度に作成した立体感覚刺激(視覚刺激は24インチ液晶黒色背景画面(視角20x16度)に視角0.1度の白色ドット1000個をランダムに配置し、画面中央部(視角10x8度)に奥行きを段階的につけて自然な立体感を描出する刺激)を作成し、ランダムに配置された白色ドット1000個が、ランダム運動(RM)、共同運動(コヒーレント)レベル90 %の水平方向(HO)、放射状方向(OF)に運動する立体運動刺激を描出した。刺激呈示は、各刺激画像をランダムに500ms呈示し刺激間隔を1000ms、中央固視点のみの黒色背景画面を呈示した。刺激毎150回加算平均し、被検者の疲労を予防する目的で3分(刺激呈示回数90~100回)毎に休憩させた。この視覚刺激を前年度の健常中高年者群(年齢45-70歳) 10名に加えて若年健常人(20歳~30歳)に呈示し、ERPとMEGの同時記録を行った。現在、昨年の中高年者のデータと比較するために、各刺激トリガで誘発された脳磁図(MEG)やERPの主成分の振幅や潜時の相違,頭皮上分布を解析中である。 一方、触覚立体刺激は、昨年度非磁性体のピエゾ型触覚器装置(ケージーエス社製)を用いて、アルファベットのEを立体的に認知できるように触知ピンを立ち上げて、左手掌に触知させたが、脳波変化やMEGに雑音が混入したため、今回は室温を18℃にして記録した。刺激呈示時間は20~30ミリ秒に変更し、刺激間隔は500ミリ秒500回の刺激を加算平均した。その結果、脳波および脳磁図で誘発反応らしきピークは認めたが、被検者によってピーク潜時に大きな違いがあるため、さらなる刺激出力の検討が必要である。 安静時機能的MRIは、健常者10名と半側空間失認患者10名で記録し、現在データの解析中であるが、右側被殻出血例に特徴的な皮質間ネットワーク異常を幾つか捉えている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
触覚刺激誘発電位および磁場計測を除いては、概ね研究の進捗状況は順調であるが、触覚刺激では、未だ脳波や脳磁場計測の際に背景雑音が完全に除去できないため、現在刺激出力と記録方法をさらに改良し、予備実験を再度行っているため、この部分に関してやや研究の進展が遅れている。
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今後の研究の推進方策 |
平成31年度は、視覚および触覚の立体感覚の脳内情報処理機構の解明のため、本年度構築した刺激方法と記録方法で、健常者と半側空間失認患者の脳波・脳磁図のデータ取得と解析を行う。さらに安静時機能的MRIを記録して、脳内ネットワークモデルによるUSAの病態メカニズム解析を行う。 <脳磁図と脳機能画像によるUSA脳の機能障害メカニズムの解明> 1)ERPとMEGの同時記録と解析:非磁性体脳波記録用電極を国際10-20法で頭皮上に設置し、全頭型306chの脳磁計センサに頭部を固定する。視覚刺激実験では刺激中心部の固視点を固視させ、触覚刺激実験では安静閉眼仰臥位で、ERPとMEGを同時計測する。解析時に眼球運動の影響を排除する目的で、記録中の眼球運動を眼瞼上に設置したシールド電極より記録する。被検者の疲労による反応の変化を予防する目的で、3分(刺激呈示回数150~180回)毎に休憩をとる。解析は、各刺激トリガで誘発されたMEGやERPの主成分の振幅や潜時の相違,頭皮上分布を検討する。また、USA群ではMEGの微小脳磁場活動を高速フーリエ解析を行って周波数ごとの相違を健常側と患側で比較検討する。 2)fMRI記録と解析: fMRI記録は、障害を持つ被検者でも安易に記録できるresting state fMRIで行う。通常のMRI記録と同様に被検者を安静閉眼臥位にして記録する。脳血流を基にした脳の機能ネットワークを共分散構造分析ソフト(LISREL)で解析し、結果を標準脳に投射して関心領域のネットワークの相違を、健常群とUSA群で比較検討する。 <脳内ネットワークモデルによるUSAの病態メカニズム解明> ERP主成分や微小磁場成分の脳内分布変化とfMRIの解析結果から立体感覚情報処理の脳内ネットワークモデルの作成を終了し、健常群とUSA群における情報処理の相違を検討しUSAの病態に迫る。
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次年度使用額が生じた理由 |
安静時機能的MRI解析ソフトや脳波解析用コンピュータが安価で入手できたことによる。次年度は今までの成果を2つの国際学会で発表する予定であるので、その費用や触覚刺激による誘発電位・脳磁場記録・解析ツールの購入に充てる予定である。
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