脳卒中患者に対するVR技術を用いたトレッドミル歩行の効果について、健常者12名、脳卒中患者10名(BRS:Ⅴレベル)を対象とし検証した。方法は、Unity(Unity Technologies社製)を用いて無機質な風景のオプティカルフロー映像を作成し、HMDでVR映像を見ながらトレッドミル歩行を5分間実施した。条件は①トレッドミルのみ(VRなし)、②トレッドミルとVR映像速度が一致、③トレッドミルに対してVR映像速度を25%上昇、④トレッドミルに対してVR映像速度を25%低下の4条件とし、1日1条件ずつランダムに実施した。評価として、10m歩行(快適速度)の時間を、介入前、介入直後、5分後、10分後、20分後に計測した。 視覚条件と時間の2要因で二元配置分散分析を行った結果、健常者・脳卒中患者ともに歩行時間に有意な交互作用が確認された。また、多重比較の結果、条件③(映像速度25%上昇)のみ、施行前と直後・5分後・10分後において有意な歩行時間の減少が確認された。 これらのことから、脳卒中片麻痺患者において、オプティカルフロー速度を変化させることで、その後の歩行速度をより効率的に向上させることができる可能性が考えられた。 現在、脳卒中患者に対するVR技術を用いた介入は、上記の検証に加えて上下肢の運動麻痺に対する介入効果や半側空間無視など高次脳機能障害に対する介入効果を検証している。これらは、VR映像上に接近してくるボール等に対して、下肢で蹴る運動や上肢でリーチするといったゲーム性を持たせたトレーニング課題を作成し、実施前後における歩行評価、上肢機能評価、注意機能評価などの指標を用いて検証している。
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