本年度は昨年度までに行った研究結果をもとに,新しい実車評価表の作成を行った。研究分担者および研究協力者と共に質的研究によりデータ解析された結果およびシステマティックレビューの結果から実車評価の項目を作成した。そして、作成した項目を教習指導員および運転指導の経験がある作業療法士を含めデルファイ法により項目の内容妥当性の検証を行った。4ラウンド実施することにより、校内評価と路上評価の2通りの実車評価を完成した。本評価についてはプレとして2施設で実施し、若干の修正を加えたところで現在マニュアルまで完成している。実車評価作成の過程については論文化し、現在投稿中である。 一方で、VRによる評価の作成も行った。今年度までの研究により、VRを利用した運転課題はシミュレーター酔いを強化する傾向が見られた。したがって、比較的酔いの傾向が少ないハザード知覚による検討を行った。本年度はハザード知覚によるVR評価動画を作成し、実際に健常者での実施を行いその正答率により評価項目の選定を行なった。この結果については論文化し、現在投稿中である。また、洗練した項目について、現在病院で脳損傷者のデータを取得中である。 さらに今後の研究として運転先進国であるオーストラリアに渡航し、オーストラリア作業療法士協会が行なっている自動車運転支援の仕組み、実車評価項目および作業療法士のコンピテンシーの書類やマニュアル、実際の運転支援の資格を持つ作業療法士からのヒアリングを行った上で関係性の構築ができ、今後もコンタクトが可能となり、今後の運転研究に取り組む一助となった。 これまでの3年間の実施により神経心理学的検査の抽出、VRによるハザード知覚検査の作成および我が国独自の実車評価の開発を行ってきた。当初の研究計画にあった多角的評価システムの信頼性や妥当性の実証研究の修了に至らないものの臨床データの着手にまで至っている。
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