研究実績の概要 |
多系統萎縮症の誤嚥を予防するプログラムの作成のために,嚥下筋に対する超音波療法(温熱刺激群)を実施した.介入効果を判別するために非温熱療法の対象をプラセボ群として比較検証を実施した.超音波療法は,被検筋を顎二腹筋,甲状舌骨筋の嚥下に代表される筋を対象とし,出力周波数を3メガヘルツ,ビーム不均等率3.5±30%,照射時間率50%とした.非温熱群は同様の3メガへルツ用プロープを用いて出力を0メガヘルツに設定して実施した.効果判定は,嚥下のクリアランスの程度を判別するために表面筋電図学的解析,改定水飲み試験,相対的高騰位置,嚥下時間を測定した.表面筋電図学的解析は,披検筋を咬筋,顎二腹筋,甲状舌骨筋の3筋とし,冷水を嚥下(自由嚥下)させた際の筋電量を振幅として算出し,同時に放電が起こっている時間を嚥下時間として算出した.改定水飲み試験は冷水嚥下時の嗄声の有無,咽込みの有無などを聴診器にて判定した.相対的喉頭位置は先行研究の手法に基づいて喉頭の位置関係が低下しているか,正常位にあるかどうかについて判定した.表面筋電図学的解析の結果は,咬筋,顎二腹筋,甲状舌骨筋全ての嚥下筋において有意な改善が認められ,嚥下時に発生する固縮による異常活動が抑制された(p<0.05).相対的喉頭位置は,温熱刺激群では有意に低値を示し,舌骨下筋の固縮により下方へ牽引される効果の抑制が認められた(p<0.05).改定水飲み試験は温熱療法群に有意な時間の短縮が認められ,1回に発生する嚥下効率の改善が認められた.超音波療法を実施すると,固縮に支配されていた嚥下筋の運動制限が解除され円滑な活動性が得られた.固縮は,頚部の前屈作用を増強させ,嚥下を発揮するうえでは不利に働くことが想定される.温熱刺激により固縮を抑制する事の重要性が示唆された.
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