乳房切除後の持続性疼痛(PPMP)には、中枢性感作(CS)関連症状や痛みの破局感が関与している。疼痛神経科学教育(PNE)は、慢性疼痛患者におけるCS関連症状および痛みの破局感を軽減するのに有効であるとされている。しかし、これまでPPMP患者を対象としたPNEの介入研究は行われていない。本研究では、PPMP患者に対してPNEが生物医学教育(BME)よりも有効であるかどうかを検討することを目的とした。本レトロスペクティブ症例対照研究では、118名の患者を対象とし、以下のように異なる時期に異なる患者を介入させた。(1)BMEと理学療法を併用したBME群(n=58)、(2)PNEと理学療法を併用したPNE群(n=60)である。術後1年後に、痛みの強さと能力障害(brief pain inventory[BPI])、CS関連症状(central sensitization inventory[CSI])、痛みの破局的思考(pain catastrophizing scale[PCS])を評価した。選択バイアスや交絡バイアスを最小化し、両群の症例数が1対1に一致するように傾向スコアマッチングが行われた。傾向スコアマッチングにより、BME群(n=51)とPNE群(n=51)が抽出された。BPIスコア、CSIスコア、PCSスコアは、BME群に比べPNE群で統計的に有意に低かった(いずれもp<0.05)。BPI強度(r = 0.31)の効果量は中程度であった。PNEはBMEと比較して、乳房手術後の機能障害およびCS関連症状が少なく、疼痛管理の成績が良好であった。
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