研究課題/領域番号 |
17K01549
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研究機関 | 九州看護福祉大学 |
研究代表者 |
加藤 浩 九州看護福祉大学, 看護福祉学部, 教授 (90368712)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 歩行 / 滑らかさ / エントロピー量 / セグメントトルクパワー / 筋張力推定 |
研究実績の概要 |
リハビリテーションにおいて筋機能向上とそれに伴う効率的な歩行動作の獲得は,極めて重要な課題である.そこで,本研究では,股関節疾患患者の筋の「質的機能」と歩行動作の「効率性(動きの滑らかさ)」の関係について研究を行う.効率性の指標として身体動作時の加速度データからの情報エントロピー量を算出し定量化を試みる.さらに,「滑らかさ」を規定する因子について,下肢運動連鎖の視点から下肢体節間の力学的エネルギー(骨盤,大腿,下腿,足部セグメント間のパワーの流れ)や,そのエネルギーを産出する下肢主要筋群の個別の筋張力(表層筋と深層筋の筋張力推定),さらに電気生理学的視点から,動的EMG周波数解析による筋の質的筋活動から検討し,股関節疾患患者の歩行動作時における質的筋機能とその動きの「滑らかさ」のメカニズムを解明することを目的とする.本年度の実績としては,継続して予備実験を展開した.まず,下肢各セグメント間の力学的エネルギーフローの検討を健常者5名と両側OA患者1名で行った.その結果,健常者とOA患者ではエネルギーの流れが異なり,健常者では大腿へエネルギーの流れが集中する結果となった.さらに,この時の健常者における大腿骨の運動学的特性としては,初期接地時前半では殆ど大腿骨の回転運動は生じていないことが示された.次にwavelet変換を用いた時間周波数解析も実施した.その結果,歩行周期の初期接地から荷重応答期にかけて,平均周波数(MPF)の変化量に差がある傾向を示した.以上のことから,大腿へエネルギーの集中とMPF上昇の両者に関連性が示唆された.さらに,OpenSimを用いた筋張力推定法について検討した.その結果,OA患者では,股関節回旋筋群に筋張力の低下の傾向が示唆された.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
当該1年間で加速度波形から動きの「滑らかさ」を定量化する情報エントロピーの計算,さらに,二乗平均平方根(Root mean square : RMS)と,加速度を微分した躍度の二乗の総和(Jerk cost),動作時間と動作距離で補整した躍度の指数(Jerk index)を比較検討できるプログラムは完成した.後は,被検者を増やして実際に分析を進めるところまできている.また,3軸分解した下肢各セグメント間の力学的エネルギーフローのプログラムもバグ修正を終え完成した.OpenSimを用いた筋張力推定法に関しては,昨年の課題である足関節周りの筋張力に関しては依然,検討の余地が残されており,本年度継続してプログラムの修正を要する.以上のことから,当初の予定していた解析する環境は概ね全て整った.
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今後の研究の推進方策 |
本年度は,研究最終年度のため,健常者を20名程度,股関節疾患患者を10名程度,計測し,情報エントロピー量と力学的エネルギーの関係性,筋張力推定,EMG等の本実験を行う.また,現在,同時に多数の解析を並行して進めているため解析に時間を要しているので,解析専用のPCを購入し研究を加速させる予定である.加えて,本研究の一部を論文として投稿することを予定している.
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次年度使用額が生じた理由 |
当初予定していた加速度センサは,別,研究予算で購入したため,予算に余剰が生じた.次年度は,研究最終年度で被検者計測数が多く,解析に時間を要するためPC購入費に充てる予定である.
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