研究課題/領域番号 |
17K01553
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研究機関 | 秋田大学 |
研究代表者 |
中島 佐和子 秋田大学, 理工学研究科, 講師 (40453542)
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研究分担者 |
大河内 直之 東京大学, 先端科学技術研究センター, 特任研究員 (30361679)
水戸部 一孝 秋田大学, 理工学研究科, 教授 (60282159)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | バリアフリー / 視覚障害者 / 音声ガイド / 音声合成 / 映画・映像 / メディア / 聴覚心理 |
研究実績の概要 |
本年度は,視覚障害者を対象とした音声合成を用いた音声ガイド評価を実施した.また,音声合成を用いた音声ガイド制作ソフトを改良した.視覚障害者を対象とした評価では,晴眼者も対象に踏まえ,合成音声および肉声の音声ガイドの話速を13段階(0.8~2.0倍)に変化させ聞き取りやすい話速を評価した.日本映画の約6秒のシーンを用いた評価の結果,音声ガイドのみを提示した条件では,特に視覚障害者の全盲者群において合成音声と肉声の最適話速の差は大きく,合成音声(平均1.31倍,最小0.8倍,最大1.9倍)の方が肉声(平均1.08倍,最小0.9倍,最大1.3倍)の音声ガイドに比べて有意に高い結果を得た.一方,本来の映画鑑賞条件である音声ガイドに映画音も加えた条件では,視覚障害者および晴眼者全ての検査協力者を含めても最適話速の範囲は0.8~1.7倍に収まることがわかった.依然として聞き取りやすい音声ガイドの話速に個人差はあるものの,合成音声と肉声の最適話速の相関は強まり,また,視覚障害者と晴眼者の近似直線は類似した傾きと切片を持った.このことから,映画音の制約により聞き取りやすい話速がある程度の範囲に収まることが推察できた.今後は,得られた成果に基づき,音声ガイドの最適話速に影響を与える映画音の特徴や制約を抽出し,具体的な話速変換方法を検討する予定である.また,音声合成を用いた音声ガイド制作ソフトについては,音声ガイド制作において重要な映画や映像の音情報を音声波形として表示し,さらに,それらにリンクしたサムネイル表示機能を搭載することで,画と音の関係を精緻に確認できる音声ガイド制作支援機能を新たに試作した.これらを通じて,音声合成の音声ガイドの質を向上させ,音声ガイドの普及に繋げたい.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究当初に予定していた「音声合成を用いた音声ガイド制作ソフト」の開発は予定以上に進んだ.しかし,本ソフトを用いた音声ガイド制作者による評価や,制作した音声ガイドに対する視覚障害者からの評価については,計画の一部が実施できていない.
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今後の研究の推進方策 |
昨年度の実施内容として予定していた視覚障害者および音声ガイド制作者への評価の一部は,新型コロナウィルス感染症対策の影響により実施困難であった.そのため,研究の最終年度に評価を移行せざるを得なかった.しかし今後も同様な状況が続く場合には,遠隔での評価方法の検討や音声ガイド制作ソフトの改良に重きを移動し,研究をまとめる予定である.
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次年度使用額が生じた理由 |
ソフトウェアの試作などは順調に進めることができたが,実験遂行に際する制約が大きく,視覚障害者や音声ガイド制作者からの協力を必要とする評価を予定通りに進めることができなかった.そのため,次年度に評価実験の残りを移行した.また,それらの評価結果のまとめや成果報告に必要な経費についても次年度に移行した.これらは,次年度の早い段階で使用していく予定である.
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