研究課題/領域番号 |
17K01555
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
藪 謙一郎 東京大学, 先端科学技術研究センター, 特任研究員 (50626215)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 構音障害 / 音声 / ホルマント / 音韻 / 声質 |
研究実績の概要 |
本課題は、「構音器官(舌)の動き」を「指の動き」に代替して、操作盤面上を指やペンでなぞると、アナログ楽器のようにリアルタイムに無段階的に位置と動きに基づいた声が生成される支援方式を発展させる研究である。「構音」と「発声」の双方の機能を分け、構音障害では残された「発声」機能を利用し、発声障害では残された「構音」機能を用いることを想定して、音声知覚や発話原理の解明を行い、ポータブルな専用機を開発することを目標としている。 これまでに、声質維持アルゴリズムの改良(構音・発声機能)として、特別な知識を持たない者でも個人の音声を容易に再現する設定ができる簡易アルゴリズムを提案し(2017年度)、一方ではマイコン制御による音声入出力装置の設計と試作を行い、話者自身の抑揚をそのまま用いて構音機能を補う支援器の実現性を示してきた(2018年度)。さらに、2019年度には、マイコン試作器に声質維持アルゴリズムを組み込み、簡易声質維持機能を持つ試作器へと発展させた。 2020年度には、前年度の試作機の課題に対し、計算処理速度を向上させる設計変更を行い、音質の改善に取り組んだ。このシステムは、具体的には、構音障害の話者が頸部にマイクを装着して声を出しながら、小型ジョイスティックを構音器官に見立てて指で入力を行う。このとき、話者があらかじめ発声した1つの録音音声を登録しておくことで、自身の声をある程度維持したまま音韻を補った音声を出力する。前年度までの試作機では、計算処理速度の不足により声質維持の処理を簡易化していたが、今年度の改良により、先行のPCによる実験アルゴリズムと同等の処理を組み込むことが可能になった。 アルゴリズムの組み込みは可能になったものの、音質については課題が残るため、次年度にはその原因を明らかにし、声質を維持したウェアラブルな構音障害音声の変換システムの実現を目指す。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
前年度までに、専用ハードウェアの設計と試作について、試作器の動作エラーの修正や、アルゴリズムの修正が重なり、予想以上に時間を要し、遅れが生じており、この遅れがそのまま影響している。また、新型コロナウイルスの流行に伴い、システム開発の環境を整えることが困難となり、実験装置の開発に遅れが生じた。
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今後の研究の推進方策 |
専用ハードウェアの試作と機能実装(構音機能):2020年度の試作器にて生じている音質の不具合の原因を調査し、設計変更を行っていく。さらに、試作器の回路および形状設計を繰り返し行い、実用性を高めていき、構音器官の物理的な可動範囲を考慮した入力が行えるように入力インタフェースを改良する。 韻律制御機能の検証(発声機能):開始が遅れている、音声の分析と物理的なモデルの考察に着手し、ヒトが意図的に行っている韻律制御要素とそうでない要素は何であるかという点に着目して、各種センサを電気式人工喉頭の振動子に接続して動作検証を行いながら、アルゴリズムの検討を行っていく。可能であれば、呼気を用いた電気式人工喉頭の制御について提案・試作を行う。 構音機能および発声機能の統合化:上記の2つを統合して、専用ハードウェアに実装することで、構音機能と発声機能とを同時に操作可能かどうかを調べる。
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次年度使用額が生じた理由 |
前年度までに、専用ハードウェアの設計と試作について、試作器の動作エラーの修正や、アルゴリズムの修正が重なり、予想以上に時間を要し、遅れが生じた。さらに、昨年度の新型コロナウイルスの流行により十分な開発環境が整わず開発期間が確保できなかっため、予定していた複数回の外注試作が延期となり、次年度使用額となっている。それに伴い、研究発表等に要する費用も次年度へ延期となっている。 2021年度に、予定していた機材の購入と基板の発注等を行う。
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