研究課題/領域番号 |
17K01556
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研究機関 | 電気通信大学 |
研究代表者 |
水戸 和幸 電気通信大学, 大学院情報理工学研究科, 准教授 (90353325)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 浮き出しカタカナ文字 / 浮き出しピクトグラム / 画数呈示法 |
研究実績の概要 |
平成29年度は、「(a)カタカナ文字列における浮き出し文字高さと触識別の関係」、「(b)触覚ディスプレイによる指先への最適文字情報呈示法」、「(c) 指先の触知軌跡と触知ピクトグラムの識別容易性の関係」の3テーマで研究を行った。 (a)では、カタカナ文字列における浮き出し文字の高さが触識別に与える影響について検討を行った。駅構内に設置されている触知案内図を想定し、エレベーター、カイサツ、トイレ、などの15種の文字列において、文字サイズを1文字当たり縦×横が10mm×10mm,15mm×15mm、文字高さを0.3~1.5mmとし、アイマスクを着用した晴眼者9名を対象に、文字列の正答率、識別時間、わかりやすさ(5段階評価:5-わかりやすい~1-わかりづらい)を測定した。結果、文字サイズによって触識別に適した文字高さは異なり、文字サイズ10×10mmでは、文字高さ0.9mm、文字サイズ15×15mmでは文字高さ1.5mmで正答率とわかりやすさが最大、識別時間が最小となることが分かった。 (b)では、直径1mm、ピン間隔2.4mmの触覚ディスプレイを用いて、機械的振動刺激による受動的な文字識別特性(文字サイズ縦14.4mm(8ピン)×横9.60mm(6ピン)、高さ1mm)を調べた。結果、カタカナ文字を画数毎に呈示する手法において正答率が高く、触識別時間が短くなることが明らかとなった。 (c)では、浮き出しピクトグラムを縦横120mmのサイズ、1mmの高さで作成し、アイマスクを着用した晴眼者10名を対象に触識別実験を行った。使用したピクトグラムはエレベーター、レストラン、階段など17種類である。結果、ピクトグラムにより触識別特性は異なり、1つのパーツが大きく閉じた図形は正答率、分かりやすさが高く、識別時間が短くなることが明らかとなった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究の目的は、視覚障害者向け施設案内図である触知案内図において、カタカナを凸化した触知文字列および視覚的記号であるピクトグラムを触知向けにデザインした触知ピクトグラムを融合した触知案内図の提案と有効性の検証である。平成29年度の研究計画は、「①触知文字の触識別特性と文字列条件の確立」、「②触知ピクトグラムの触識別特性と触知向けピクトグラムの提案」の2課題である。①に関しては、「(a)カタカナ文字列における浮き出し文字高さと触識別の関係」、「(b)触覚ディスプレイによる指先への最適文字情報呈示法」の研究によりおむね目標を達成できたと考える。②に関しては、「(c) 指先の触知軌跡と触知ピクトグラムの識別容易性の関係」の研究により触知ピクトグラムの触識別特性を明らかにすることが出来た。触知向けピクトグラムの提案は未達成であるが、本課題はH29~H30年度に達成することを目標としていることから、現時点では進捗状況は順調と考える。以上より、「(2)おおむね順調に進展している」と判断する。
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今後の研究の推進方策 |
これまでの状況から今後においても計画通り研究を推進する。 しかしながら、新たな課題として、造形物の表面の粗さが触識別におよぼす影響について検討する必要がある。本研究課題では、光造形法の3Dプリンタを用いて浮き出し文字および浮き出しピクトグラムを作成してきたが、これまでは、熱溶解積層法(FDM)の3Dプリンタや立体コピー作成機を利用してきた。造形物の表面の滑らかさは光造形法で作成したものが非常に高く、FDMおよび立体コピー作成機のものは劣る傾向にある。つまり、造形法により造形物表面の粗さが異なることから触識別に与える影響も大きくなることが予想される。ゆえに、造形法と触識別の関係について配慮しつつ、研究を推進していく必要があると考える。
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次年度使用額が生じた理由 |
物品費は、当初予定額よりも増えている。これは実験条件を満たす3Dプリンタおよび消耗品の費用が増えたためである。一方で、被験者謝金は、支出がゼロとなっている。これは、当初予定していた視覚障害者を対象とした実験を行わなかった為である。 よって、全体として被験者謝金が次年度使用額となっている。 次年度は、視覚障害者を対象とした実験において、使用することを計画している。
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