令和元年度は、「(a)触知文字(タクタイル文字)のフォントと触識別の関係」、「(b)イメージを考慮した触知ピクトグラムの検討」の2テーマで研究を行った。 研究(a)では、触知文字の最適フォント、および文字サイズの触識別特性の明確化を目的として立体コピー機で作成したカタカナ文字の触識別実験を行った。使用フォントは、J IS-0052で推奨されているゴシック体としてMSゴシック、視認性の高いメイリオ、高齢者や弱視の人向けに視認性・可読性の高いU Dフォント(モリサワのBIZ UDゴシック)、視認性の高い合成フォントであるMigu 1Mとした。晴眼者8名にアイマスクを着用させ、中途視覚障害者の再現を行い、文字サイズ4種類(8mm、12mm、18mm、24mm)における触識別特性を調査した。結果、正答率および識別時間においてメイリオ、BIZ UDゴシック、Migu 1Mの有効性が示され、最適文字サイズは18mmであることが明らかとなった。 研究(b)では、従来のピクトグラムのデザインが視覚障害者のイメージと異なる点に注目し、エレベータ、コインロッカー、タクシー、トイレ、バス、鉄道の6つにおいて、視覚障害者を対象としたヒアリンング調査から各ピクトグラムの図形イメージを抽出し、新たな触知ピクトグラムを考案した。立体コピー機を用いて縦横12cmの大きさで新たな触知ピクトグラムを作成し、晴眼者10名にアイマスクを着用させ触識別実験を行った。結果、新規に考案した触知ピクトグラムにおいて、正答率はほぼ100%と従来の触知ピクトグラムと違いは無かったものの、識別時間の短縮、意味のとらえやすさ、区別のしやすさの向上が認められた。以上より、これまでの「構成要素が少ない」、「1つの要素が大きい」、「単純な曲線、直線で構成」の図形条件に加え、乗り物の向きや図形の単純化など視覚障害者のイメージを考慮することで、触知に適したピクトグラムを提案できることが示唆された。
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