2019年度は,昨年度の内容を継続して実施しながら(1)時計描画テストで描かれた数字から空間認知度を評価する方法に関する検討と(2)運動機能と認知症進行度の評価に関する基礎研究とシステム開発を進めた.(1)については,深層学習の手法を用いることにより,描画テストで描かれた数字からその特徴を自動的に抽出して空間認知機能を推定する方法を提案し,評価実験によってその有効性について確認した.また(2)においては,手指運動と認知機能の関係性について検討した.近年の研究では,認知症が進行すると認知機能の低下に加えて情動機能や運動機能も低下すると言われており,認知症の進行度評価には情動機能や運動機能の評価も必要となる.特に,手先の器用さを測定するペグボードテストのスコアと認知機能の間に高い関連があることや,楽器演奏や手工芸等を行う人の認知機能が高いことなどが報告されている.2019年度はこの点に着目し,手指の動き(手指運動機能)の部分に着目した基礎的検討を行った.簡単なゲームなどから手指運動機能を計測するシステムの構築を目指し,プロトタイプシステムの製作と運動機能評価のための特徴量について検討した.手指運動機能計測のためのゲームの題材としてTangramを使用し,手指をキャプチャするデバイスとしてLeapMotionを用いた.介護施設での計測実験では,Tangramのブロックを動かしている手をLeapMotionで計測し,その結果から認知機能と関係があると思われる特徴量を考案した.一方,被験者の認知機能(短期記憶と長期記憶)については,施設職員の経験に基づいてラベル付けされたものを用い,手指運動から得られる特徴量と被験者の認知機能の間の関係性について検討した.
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