研究課題/領域番号 |
17K01568
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研究機関 | 熊本大学 |
研究代表者 |
上田 裕市 熊本大学, 大学院先端科学研究部(工), 教授 (00141961)
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研究分担者 |
坂田 聡 熊本大学, 大学院先端科学研究部(工), 助教 (80336205)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 音声ホルマント / 障害音声 / 音声変換技術 / 音声合成 |
研究実績の概要 |
話者別ホルマント空間を構成するための単語音声群・朗読音声群についてのホルマント分析を行った。話者群は、成人男性・成人女性各12名および6歳未満の幼児8名である。抽出ホルマント(F1~F3)に基づいて、構音空間(h,v)で定義される話者毎のホルマント復元関数を算出し、この関数の特徴変数から話者の「個人性」を分離できる。即ち、音響特徴量としてのホルマント周波数(F1~F3)の復元空間により特徴づけられる声道形状であり、さらには話者の声道長を特徴づける声道長比である。 「音韻性」に関しては、構音空間(h,v)そのものが話者の声道長の違いを正規化する効果があることから、hv座標として「音韻性」を特徴づけることができる。年度後半からは、これらの話者性に関する特徴関数である復元関数の違いと生理学的・解剖学的な話者特徴の違いとの相関性について検証を行っており、年度末の段階では結論は得られていない。 一方、hv構音空間に基づく母音音声の変換方式として規格化空間を介して母音音韻性を保持しながら、異話者音声に変換する原理について検討し、学会講演会にて発表した。この音声変換原理は、今後、発話機能回復支援において、自らの異常音声を健常化し、発話規範となり得る目標音声を提示するのに必要な技術である。 さらに、hv構音空間(座標)から、当該母音を発声しているときの声道形状にマッピングする方式を提案し、学会講演会にて発表した。この技術は、発話機能回復支援において、発声母音のリアルタイム可視化フィードバックにおいて必要な技術となる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
本年度に目標として掲げた「ホルマント空間の分離モデルの構築と検証」について、モデル構築のための手法は整備でき、十数例の話者群への適用によりその話者モデル・音韻モデルの可能性は確認できたが、その検証については、現在進めている段階のため最終確認ができていない。さらに、これらの実績に関しては、講演論文2編にとどまっており、成果発表の計画において「やや遅れている」との状況である。
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今後の研究の推進方策 |
30年度は、29年度の研究計画の遅れ(分離モデルの生理学的・聴覚心理学的検証とそれらの成果発表)を取り戻すとともに、当初の30年度計画である分離モデルの実用的展開(変換音声合成および可視化方式~一部は29年度に開始している)としての支援システムのプロトタイプを構築していく予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
当初、購入を予定していたデータ解析用PCの年度内利用が不要であったための設備備品残と成果発表の機会が当初計画より少なかったための旅費残の結果、45万弱の次年度使用額が生じた。この残額については、次年度(30年度)において、当初計画通りの費目にて使用する予定にしている。
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