研究課題/領域番号 |
17K01575
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研究機関 | 富士大学 |
研究代表者 |
金子 賢一 富士大学, 経済・経営システム研究科, 教授 (50337177)
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研究分担者 |
真壁 寿 山形県立保健医療大学, 保健医療学部, 教授 (60363743)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 筋シナジー / 転倒 / 表面筋電図 |
研究実績の概要 |
本研究では高齢者の転倒予防を目的に,転倒を導く下肢運動機能の低下度を筋萎縮と筋活動の協調性から評価し,最終糖化産物(AGEs)と筋シナジー(Muscle Synergy)を変数とした転倒予測モデルの開発を目指している.本年度は,関節自由度が高い通常歩行と単純な膝伸展・膝屈曲運動を対象とし,運動の複雑性と運動機能の低下度との関連性を明らかにすることを中心に研究を行った.本年度の具体的な研究実績は以下のとおりである. 歩行能力や起居能力に関連深い膝関節伸展筋力に着目し,膝関節伸展運動に伴う大腿四頭筋の表面筋電図と筋音図を健康な高齢者5名,本学の大学生3名から計測した.得られた信号を離散ウェーブレット変換することで,周波数帯域ごとのパワー値(振幅情報)を比較した.その結果,(1)表面筋電図よりも筋音図の方が高齢者と若者との比較においては顕著な差が生じること,(2)筋音図のパワー値(振幅情報)は7.8Hz以上の周波数帯域では高齢者の方が小さいが,3.9Hz~7.8Hzの低周波数帯域においては,高齢者の方が大きいこと,(3)膝関節伸展運動に伴う大腿四頭筋の活動に関する表面筋電図,筋音図ともに,高齢者の方が若者より低周波数成分の割合が多いこと,が判明した. 一般的に,高齢者は若者に比べると筋力の低下,動作の緩慢さ,疲労のしやすさが顕著となることが言われている.これらは,加齢による速筋線維の選択的な萎縮が原因と考えられている.今回,高齢者から測定した筋音図信号にウェーブレット変換を施すと,高齢者の主要な筋活動の周波数帯域は若者と比べ,統計的に有意に低周波数帯域へシフトしている様態が明らかとなった.筋音図信号の低周波数化は加齢に伴う速筋線維減少を示す一つの指標と成り得ることが示唆された.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
実験を行うためには,山形県立保健医療大学の倫理審査を経る必要があり,手続きに関して時間を要した.しかし,倫理審査を経る間,これまで予備実験として行ってきた実験結果をまとめる形で,6月にはオーストラリア ブリスベンで開催された国際会議(XXVI Congress of the International Society of Biomechanics)で研究発表を行うことが出来た.本研究遂行に関する倫理審査も無事に通過することが出来た.
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今後の研究の推進方策 |
当初の研究計画通り,運動の複雑性を外的基準に,筋群の協調性(筋シナジー)と筋の生化学的な老化度(最終糖化産物: AGEs)を尺度とした下肢運動機能障害を評価する研究を行う.そのために,運動の複雑性と運動機能の低下度との関連性を中心に検討する.関節自由度が高い歩行運動と単純なぺダリングに伴う膝伸展・屈曲運動を対象とし,それぞれの運動ごとに筋シナジーを算出し筋シナジーの数と寄与率を求める.さらに,山形県立保健医療大学にて,高齢者の下肢筋群から最終糖化産物(AGE)量を計測し,運動機能の低下度との相関関係を明らかにする.
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次年度使用額が生じた理由 |
山形県立保健医療大学で行う予定だった実験に関して,倫理審査をパスするのに時間を要し,当初,平成29年度に予定していた実験を平成30年度に行うように計画を変更したため.倫理審査は平成30年2月に通過したので,平成30年度は前年度分も含め,実験を行う予定である.
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