背屈制動機能をもつ継手無し短下肢装具と背屈制動機能をもたない油圧式短下肢装具を使用した片麻痺者の歩行をランダム化比較試験で比較した。 41名の回復期片麻痺者(男性31名 女性10名、58.4±11.3歳)をランダムに2群に分け、最初に装具なし歩行を3次元歩行分析で計測比較した。その後、各装具を使用した理学療法士による1日1時間の歩行練習を2週間実施し、練習後の歩行を3次元動作分析で計測した。歩行速度、時間距離因子、関節角度、関節モーメント、床反力、下腿傾斜角度を抽出し、対応の無いt検定あるいはマンホイットニーのU検定で2群を比較した。有意水準は5%とした。 36名の片麻痺者(油圧装具群17名、継手なし装具群19名)が比較対象となった。計測開始時点の装具なし歩行の比較で2群に差がないことを確認した。練習後の歩行を比較した結果、油圧装具群で継手なし装具群と比較して歩行1周期を通して足関節が背屈位となり、足関節まわりの負のパワーが大きいことが分かった。足関節角度と負のパワー最大値の関係では、油圧装具群は対象者によるばらつきが大きいことが明らかになった。これらの結果より、継手なし装具は歩行時の足関節まわりの動きとパワーを制限するが、油圧装具は対象者による歩行のばらつきが大きいと考えられる。装具の有無による歩行の比較の研究は数多く行われてきたが、装具の機能の違いによる歩行の比較は明らかになっていないため、これらの結果は歩行練習時に装具を選定する際に有用な情報になると考えられる。
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