研究課題/領域番号 |
17K01580
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研究機関 | 文教大学 |
研究代表者 |
武藤 剛 文教大学, 情報学部, 准教授 (50433701)
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研究分担者 |
武藤 ゆみ子 東京工業大学, 総合理工学研究科(研究院), 研究員 (30614614)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | aging / gait / posture / elderly / laser pointer task / virtual pointer task |
研究実績の概要 |
本研究は,歩行姿勢の評価システム“DOCTORS’S EYE”(テレビジネス社製)を用いて,加齢により生じる体の歪みを定量的に分析し,それを新たな年齢指標(歪み年齢)として推定するモデルの提案を行った.特に,高齢者の転倒リスクに直結する歩行姿勢に関して,高齢者は,若年者と比べ,直立静止時と歩行時の間で,体の前後方向に関する体の歪みの大きさに顕著な違いがあり,この変化に注目することが体の歪みを評価するうえで必要であること,そして,そのためには本研究で用いられているような歩行運動時の姿勢を簡便に計測できる装置によって評価することの有効性を示した. さらに,これらの知見に基づき,歩行姿勢の補正を支援する訓練手法として,レーザーポインタを手で持ち,それから照射されるレーザー光を正面の的に当て続けながら歩く形式の課題(レーザーポインタ課題)と,それを自宅などでも簡易に実施できる形式に改良したバーチャルポインタ課題(VP課題)を新たに提案し,それを用いた歩行実験における高齢者の姿勢の歪みの補正効果を分析した.その結果,レーザーポインタ課題の遂行中において,高齢者の姿勢の歪みや,体のふらつきが低減すること,そして,そのような効果が,的上のポインタの動きとして示される情報のフィードバックによって実現されていた可能性が明らかとなった.また,同様の姿勢の補正効果がバーチャルポインタ課題を実施中の歩行においても見られることも確認することができた.以上の結果から,提案するレーザーポインタ課題及び,バーチャルポインタ課題が,姿勢の歪みの補正訓練を支援する手法として有効である可能性を示した.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
2019年度は,前年度までに開発したレーザーポインタ課題を実際の訓練システムとして活用できることを目指し,その訓練装置の開発を計画していた.特に,課題の訓練効果をコントロールできるように,課題の改良を進めることを予定していた.これを踏まえ,レーザーポインタ課題と同様に軽度の姿勢変化の改善を目指し,自宅等でも簡易な形式で実施できる新たなエクササイズ課題として家庭用ゲーム機で用いられているコントローラによるポインタ操作を活用したバーチャルポインタ課題(VP課題)の開発を進めた.具体的には,バーチャルポインタ課題を実装したシステムのプロトタイプを制作し,若年者を対象とした動作確認実験を行った.その結果,バーチャルポインタ課題の遂行中において姿勢の前傾度合が小さくなる可能性が明らかとなった.このことから,レーザーポインタ課題と同様の姿勢の補正効果があることを示唆することができたとともに,その具体的な評価方法の構築も進められたことから,ほぼ計画通りの成果を得ることができたと考えられるため.
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今後の研究の推進方策 |
2019年度までに構築した,レーザーポインタ課題及び,バーチャルポインタ課題を実際の訓練システムとして活用できることを目指し,その訓練装置の開発と,その有用性評価を実際の高齢者を対象に実施することを行う.特に,課題の訓練効果をコントロールするため,バーチャルポインタ課題のパラメータの調整や改良を進める.そのうえで,現段階のプロトタイプを用いた訓練において実現できている姿勢を補正する効果の詳細なメカニズムを明らかとするため,高齢者の歩行姿勢の改善プロセスを,認知の伴わない外因性の改善プロセスと,外部環境の認知に基づきボディイメージを補正していく内因性の改善プロセスの,2種類のプロセスの観点から,分析をすすめる予定である.
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次年度使用額が生じた理由 |
(理由)訓練システム作成が予定よりもやや早く進み,そこにかかる人件費を十分消化することができなかったとともに,2019年度末に実施予定だった大規模実験が新型コロナウィルスの感染拡大により中止となったため,次年度使用額が生じた.
(使用計画)2020年度以降,高齢者の歩行姿勢の補正訓練を支援するシステム(レーザーポインタ課題及び,バーチャルポインタ課題)の改良のための費用とともに,その有効性評価実験の実験補助のための人件費として活用する.
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