これまでの質的研究部分の成果について、原著論文「障害のある在宅脳損傷患者の回復につながる主体性の概念」を対人援助学研究に発表した。ACRM Annual Conferenceで「主体性」の概念の英訳について、アメリカ、カナダのリハビリテーション科医と議論し、英訳の困難だった「障害者の回復につながる主体性」の英訳に努め、「主体性回復モデル」と「主体性回復を促す周囲のかかわり方」の2本の原著論文を発表した。この知見により、脳損傷による中途障害者の主体性のとらえ方の概略を示すことができるようになった。この「主体性回復モデル」は、障害者心理を扱う際にも有用であり、放送大学「発達心理学特論」第15章「困難と共に生きる」にも引用された。 この知見をベースとして、2019年6月から毎月「主体性量的評価研究会」を開催し、現場の実践経験から一般的な理解を深める評価方法の検討を進めた。対人援助学会第11回大会の企画ワークショップで医療関係者以外の福祉関係者、学者などの意見を踏まえた評価方法が検討できた。「主体性量的評価研究会」の会議は、2020年11月からオンラインとした。情報共有のために、研究会のホームページにこれまでの論文や会議の議事録や関連知識を載せ、YouTubeに講義動画などを載せて、適宜更新し、研究メンバーや新たな参加者で研究の知識を共有している。正しい障害受容の理解と適切な対応を取るための一助になると思われる「主体性の概念」について、「障害の受容と障害のある人の主体性」を発表した。 2022年9月からは「主体性回復段階評価票」を用いて実際の症例の評価を試みるパイロット研究をおこなった。また、同時に、脳損傷の生活期患者のICF全体を評価できるスケールとしてMPAI-4を翻訳し、日本語版を作成した。
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