本研究は濃厚栄養剤の経管補給に関連した「液体栄養剤症候群」の解決を目的に、市販の粘度可変型栄養剤に代わる「患者の病態に応じた『オーダーメイドの粘度可変型栄養剤』を自己調製する手法を確立する」と共に、調製上の問題点や注意点を明らかにして患者と家族、医療従事者や介護支援者へ情報提供することを目標とした。 令和元年度も昨年度と同様、市販の濃厚栄養剤と増粘多糖類を組み合わせて粘度可変型栄養剤を試作した。ここで凝固剤には高分子量のアルギン酸ナトリウムを用い、また市販のキサンタンガム系増粘剤は昨年度と同様、調製時の利便性を向上するために試作した「ペースト」を用いた。なお、今年度はアルギン酸ナトリウム凝固剤とキサンタンガム系増粘剤それぞれに対して、組み合わせる濃厚栄養剤を昨年度と入れ替えて相補的な研究を実施した。さらに人工胃液との反応調査もpH1.2の他、高齢者や胃食道逆流の既往を有し制酸剤投与を受けている患者を想定し、pH4の人工胃液も調製して研究に供した。 まず凝固剤としてアルギン酸ナトリウムのゾル水溶液を調製し、栄養剤と混合して粘度可変型栄養剤を試作した。これを人工胃液へ加えて37℃で1時間震盪攪拌を行った結果、アルギン酸ナトリウム濃度および人工胃液(pH1.2)比率の増加と共に試作した栄養剤が凝固したが、タンパクが含まれない栄養剤では凝固せず、またpH4では粘度のみ増加した。本結果は胃酸によるタンパクの凝固と、水に不溶なアルギン酸の生成が原因と結論づけた。 一方、試作したキサンタンガム系増粘剤ペーストを用いた場合、人工胃液(pH4)では粘度増加のみであり、pH1.2では全ての栄養剤が凝固した。前述の通り、栄養剤にタンパクが含まれると低pHで凝固するが、キサンタンガム系増粘剤は低pHでも粘度が維持できるため、本結果より胃内でも離水が生じ難く胃食道逆流抑制の可能性が示唆された。
|