研究課題/領域番号 |
17K01584
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研究機関 | 東海大学 |
研究代表者 |
林 省吾 東海大学, 医学部, 教授 (60349496)
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研究分担者 |
阿部 幸恵 東京医科大学, 医学部, 教授 (20449218)
中澤 正孝 東京有明医療大学, 保健医療学部, 准教授 (40563474)
伊藤 正裕 東京医科大学, 医学部, 主任教授 (00232471)
畑山 直之 愛知医科大学, 医学部, 講師 (80534792)
横田 紘季 名城大学, 理工学部, 助教 (50815876)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 解剖学 / 医学教育 / シミュレータ / 肩関節 / 外傷 / 診断 |
研究実績の概要 |
肩関節は最も脱臼しやすい関節である。10歳代から20歳代の初回肩関節脱臼では,50%以上が再脱臼を生じて,手術以外に治療法のない反復性脱臼に移行する。 また,医療機関の誤診や接骨などでの治療の結果,陳旧性脱臼になる例も少なくない。肩関節脱臼を適切に診断し,治療するためには,発症時に適切な視診・触 診が行われることが重要である。 本研究の目的は,再現性の高い,肩関節脱臼の視診・触診シミュレーションモデルを開発し,その評価を行うことである。 今年度は,昨年度試作した肩関節脱臼シミュレーションモデルの改良と材料開発を行った。骨性部分について,昨年度の試作では,骨性部は既存の骨模型を流用したが,今年度は新たにDICOMデータを編集し,3Dプリンタを用いて造形した。素材は一般的なプラスチック素材であるABS樹脂を用いた。 肩関節の状態を 再現するためには,靭帯および腱板に加えて,肩関節を動かす深層の筋群 (Inner muscles)と浅層の筋群(Outer muscles)を再現する必要がある。特に,肩関節脱臼の診断にはOuter musclesに関する知識と技術が重要であり,これらの形態と質感を再現する必要がある。さらに,肩関節が動作時に安定した状態を保つためには,Inner musclesとOuter musclesとのバランスが最も重要であり,直接触診できないInner musclesに関する知識も必要となる。今年度はこれらの筋のうちOuter muscles(回旋筋腱板)と関節包について,一般的な日本人の公開データを基に柔らかな素材(ゴムライクな熱可塑性エラストマーフィラメント)でモデルを作成し,同様に3Dプリンタで出力した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
骨部は実際の計測標本に基づき,質感も含め比較的実際の症例に近い状態を再現できた。一方で,,上述のように,肩関節脱臼の診断には,骨,関節のみならず,触診可能なOuter musclesに関する知識と技術が必要である。これら軟部組織の情報については,未だ十分に収集できていない。具体的には,筋と関節包については,スキャニングを行えていない。また,素材についても,熱可塑性エラストマーフィラメントは,実際の軟部組織に比べてやや固く,更に素材の検討が必要である。
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今後の研究の推進方策 |
現状では,骨と軟部組織で異なる個体データによっているため,改めて実際の人体による骨および筋と関節包を含めたスキャニングを行い,DICOMデータを収集する。このデータに基づき,今年度試作したのと同様の手法で,改めてシミュレータモデルを作成する。さらに,軟部組織について,新たな素材を選定し,比較検討する。
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次年度使用額が生じた理由 |
コロナ禍の影響で,分担者の施設を訪ねることができなかったこと,学会などでの発表,報告,および展示の機会が得られなかったことから,旅費およびその他の経費を十分に使用することができなかった。また,分担者と対面による共同研究が十分できなかったため,試作を十分に繰り返すことができず,また,3Dプリンターの更新を行えなかった。次年度は,3Dプリンターおよび材料を新規に購入し,モデルの改良を行うとともに,可能であれば,学会などでの発表,報告,および展示も行いたい。
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