研究課題/領域番号 |
17K01587
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研究機関 | 神奈川工科大学 |
研究代表者 |
高尾 秀伸 神奈川工科大学, 創造工学部, 教授 (60329307)
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研究分担者 |
中根 雅文 慶應義塾大学, 政策・メディア研究科(藤沢), 特任助教 (90383926)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 視覚障害 / 立体音響 / 環境情報 / 音楽 / ユーザインタフェース |
研究実績の概要 |
過去の科研費にて開発した視覚障害者用立体音響ナビゲーションインタフェースでは、屋内店舗空間を歩行中の当事者ユーザに対して、周囲のランドマークとなる設備、障害物ならびに陳列されている商品の実在する位置に立体音響を用いて仮想音源を生成し、完全開放型イヤスピーカを介して設備名称や説明を「そのものの位置から」音声呈示し、これをジェスチャで選択的に聴取可能な拡張現実を実現した。しかし、主に言語情報を用いて呈示する従来の方法では、多数の設備等を一度に呈示すると聞き取り易さに課題が残った。そこで本研究では、上記システムを拡張し、構造化された実世界のオブジェクト(の位置から呈示される仮想音源)に音楽情報(旋律、和音、律動)を構造的に割り当てることで、周囲の複数の環境情報を低ストレスで同時聴取・認知可能な複合現実ユーザインタフェースの開発を目標とした。 [1] 視覚障害者が移動中の環境認知に必要な環境情報の選定と構造化・体系化:屋内移動の際に認知が必要な空間情報(ランドマークや障害物)の選定と構造化・体系化を行った。 [2] 音楽情報の構造化・体系化:音楽情報をオブジェクトに割り当てることで環境情報を体系的に聴覚表示する方法としてBlattnerら、Brewstarらの「Earcon」が提案されている。本研究ではこれらの先行知見を参考に実音響空間のオブジェクト表現にふさわしい音楽的表現方法の構造化・体系化を行った。スーパーマーケット店舗内の環境情報を視覚障害者の買い物行動を想定した基準で選定し,環境情報に割り当てられた単音が音楽的にユーザに呈示されるインタフェースのテストベッドの構築および評価を行った.その結果,記憶負担の低減が示唆され,実証実験では高い快適性が示された.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初計画のうち[1] 視覚障害者が移動中の環境認知に必要な環境情報の選定と構造化・体系化、および[2] 音楽情報の構造化・体系化について成果を出すことができた。しかし、[3] 国内の音楽情報を用いた音サインの事例調査については、当初予定していたメルパルク熊本視察が震災によって次年度への延期となった。なお当該調査はH30年度に行っても、全体の進捗に大きな影響はないと考えている。以上より、概ね順調と判断される。
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今後の研究の推進方策 |
H30年度は設計・プロトタイピングフェーズと位置付けている。具体的には以下の研究を予定している。 [2-1] インタフェース設計として、前年度に得られた「屋内環境情報体系」と「音楽情報体系」を基礎的な設計指針に基づいて融合することでインタフェース設計を行う。[2-2] インタフェースのプロトタイピング:[2-1]の設計に基づき、概念評価用のプロトタイプシステムを実装する。[2-3] 音楽を用いることによる情報圧縮効果の評価方法に関する検討:複合現実空間において、音楽を用いて情報呈示を行う際の評価指標として、情報の圧縮率が考えられる。しかし、現実空間、仮想現実空間、音楽の心理的な概念空間という3つの異なる空間を複合した場合の情報量の評価方法を示した例は見当たらない。そこで、音楽を用いることによる情報圧縮効果の評価方法の検討を行う。[2-4] 概念プロトタイプ評価実験:[2-2]で実装したプロトタイプシステムを用いて、想定された効果が得られるかユーザビリティ評価実験を行う。実験は視覚障害者に参加していただいて実施する。上記に加えて、前述のように国内の音楽情報を用いた音サインの事例調査を実施する。
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次年度使用額が生じた理由 |
国内の音楽情報を用いた音サインの事例調査については、当初予定していたメルパルク熊本視察が震災によって次年度への延期となったため、調査に関わる旅費等の費用を次年度に繰り越したい。
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