研究課題/領域番号 |
17K01588
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研究機関 | 東京医療保健大学 |
研究代表者 |
今泉 一哉 東京医療保健大学, 医療保健学部, 教授 (50454179)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 介護予防 / 支援技術 / 足形状 / 歩行 / 姿勢 |
研究実績の概要 |
少子高齢化の進む我が国においては,健康寿命の延伸,要介護者の減少などが重要課題であり,中高年を中心に健康に対する関心が高まっている.足部は重心保持・移動の作用点であり,扁平足や外反母趾などの問題は,運動器障害を誘発すると考えられる.これらの運動器疾患は長年の身体運動による力学的な負荷の蓄積と,個人要因等が相まって発症・進行すると考えられる.本研究では,運動器の力学的負荷に影響する要因として,足部形状,立位姿勢,歩行動作に着目し,介護予防などのフィールドで運動器障害や疼痛リスクを評価する仕組みを構築することを目的とする. 具体的には,1)高齢者の足部三次元形状,歩行・立位時等のモーションキャプチャ,床反力および足圧分布等の測定を行って基礎データを得る.2)これに基づいて各部関節モーメント等の力学的負荷の算出を行い,足部形状・歩行や姿勢との関係について検討を行う.3)次にウェアラブルな小型センサを用いて,運動器リスクを推定するモデルを構築する.4)これらの成果に基づいて,ウェアラブルセンサなどを用いてフィールド環境で評価することを試みる. 平成29年度においては,足部形状,歩行・立位時等の測定実験を実施して基礎データを得た.対象者は要介護や要支援の非認定である自立歩行可能な健常高齢者45名,若年者5名であった.足部形状の測定は静止立位姿勢として,足部3次元形状を表す座標データ及び,足長,足幅等の形態学的データを得る.運動学的データについては,自由歩行,静止立位中の加速度や角度,足圧分布データを取得した.また,実験時には,転倒経験や下肢の障害(変形性膝関節症,外反母趾等)の有無,健康状態,活動度などの聞き取り調査を同時に行った. これまでの成果として,機械学習を用いて,歩行中の足圧データや加速度データと病歴・障害などの状態が予測できる可能性を示した.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究では,運動器の力学的負荷に影響する要因として,足部形状,立位姿勢,歩行動作に着目し,介護予防などのフィールドで運動器障害や疼痛リスクを評価する仕組みを構築することを目的とする.この研究においては,対象とする高齢者の運動学的なデータと,障害などの基本データを用意することが重要である.また,現場での応用のためには,ウェアラブルデバイスなどの実用可能性を探ることも必要である. 本年度は,実験実施によるデータ取得ができたこと,また,機械学習によって障害と運動学的パラメータとの関連を示すことができた.このため順調に進行していると考える.
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今後の研究の推進方策 |
平成29年度で実験で収集したデータから運動学因子を算出する. 歩行は,時空間因子(歩幅,歩行速度,ケイデンス等),運動学因子(関節角度,関節モーメント,衝撃力,重心動揺 ),立位は運動学因子(関節角度,重心動揺)である. 次に,算出した運動学因子と足部形状因子との関係について,多変量相関分析などの統計学的手法を用いた分析を行う. また,転倒経験や下肢の障害(変形性膝関節症,外反母趾等)の有無,健康状態,生活状態と,足部形状および運動学因子の関係について,疼痛や障害をアウトカムとした分析を実施して,リスク要因を明らかにする.これらを総合することで,力学的観点,疫学的観点の両面から因果関係の検討を行い,リスクとなる因子の抽出を行う. 平成31年度は,運動器障害・疼痛リスクと関係する因子が抽出されるので,これらを介護予防等のフィールドで評価するための簡易測定手法の開発を行う. 足部形状については,申請者らの先行研究に基づいて,基本的に足圧分布によって評価を行う.外反拇趾や内反小趾などの指変形については,画像評価も併用することを検討する.
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次年度使用額が生じた理由 |
被験者謝金や補助者の謝金を計上していたが,別のプロジェクト予算と合同のため支出しなかった.また,海外での発表の機会が来年度となっため,使用額の差が生じた. 本年度は,新たに追加実験を行うほか,ウェアラブル端末などの購入を予定している.
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