研究課題/領域番号 |
17K01595
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研究機関 | 近畿大学 |
研究代表者 |
栗田 耕一 近畿大学, 工学部, 教授 (90455171)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 歩行運動 / 非接触計測 / 静電誘導電流 / 高齢者 |
研究実績の概要 |
本研究では高齢者の歩行能力や運動機能低下を「見える化」する手法として、超高感度静電誘導電流検出技術を用い、被験者に一切装置を装着することなくアンビエントに人体動作を検出し高齢者の生活支援を実現するシステムを確立することを目的としている。さらに、歩行機能を推定し歩行能力の推移や運動機能の異常等を検知する技術の確立を目指している。本年度は、被験者の歩行運動による人体電位変動を、被験者から数メートル離れた位置に設置した電極に誘起される静電誘導電流を検出した。さらに、検出された波形を解析することにより、歩行機能推定技術の開発を行なった。歩行運動により非接触で検出された静電誘導電流波形をウェーブレット変換することによりスカログラムを得た。これらのスカログラムを比較することにより、歩行動作や日常動作に現れる個人固有の特徴や運動機能の推移を非接触で検出可能であることを明らかにした。さらに、得られたスカログラムを画像解析することにより、被験者の動作の周期性や非周期性の特徴を可視化できることを示した。また、畳み込みニューラルネットワーク(CNN)を用いた深層学習を行うことにより、スカログラムに基づく歩行動作の識別が可能であることを明らかにした。さらに、不自由な歩行を模擬するため、健常者の膝を添え木とサポータで固縛し歩行信号を検出した。この模擬不自由歩行運動により誘起される静電誘導電流波形を計測し、波形をウェーブレット変換することによりスカログラムを得た。このスカログラムには歩行の不自由の程度に応じた特徴が現れており、深層学習の畳み込みニューラルネットワークを用いることにより被験者の歩行動作から歩行動作における不自由さの程度を識別することを試みた。その結果、CNNによる深層学習により約90%の精度で歩行の不自由の程度を識別可能であることを明らかにした。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
被験者の歩行運動により誘起される静電誘導電流波形を数メートル離れた位置から検出し、歩行運動や日常動作によるデータを蓄積した。得られたデータをウェーブレット変換することによりスカログラムを得た。このスカログラムを用いた深層学習を行うことにより、当初の計画どおり、歩行能力や運動機能低下を定量的に評価可能であることを明らかにした。
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今後の研究の推進方策 |
当初の計画どおり、複数の被験者の歩行運動や日常動作による静電誘導電流波形データを蓄積し、畳み込みニューラルネットワーク(CNN)に加えてリカレントニューラルネットワーク(RNN)を用いた深層学習による歩行機能識別技術や行動推定技術の確立を目指す。
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