研究課題/領域番号 |
17K01604
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研究機関 | 秋田工業高等専門学校 |
研究代表者 |
宮脇 和人 秋田工業高等専門学校, その他部局等, 教授 (00390906)
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研究分担者 |
島田 洋一 秋田大学, 医学(系)研究科(研究院), 教授 (90162685)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | バイオメカニクス / リハビリテーション / 機械力学・制御 |
研究実績の概要 |
本年度の研究課題 負荷振動を利用することで中・高齢者が利用しやすく、スポーツ障害を引き起こすことなくサルコペニアを予防する機構を提案し運動補助機器を試作する。 サルコペニアを予防するために中・高齢者の衰えた全身の筋力を向上させる新しいシステムを開発する。ここで、筋力の増強に関しては力センサー、圧力センサー、加速度センサーなど各種センサーを用い中・高齢者の状況をモニタリングし、各個人の身体能力に適応したナノ負荷変動を運動補助機器に取り入れる。 健康寿命を延ばすためにはスポーツが有効であるが、中・高齢者の場合はつい走りすぎたため膝を痛めるなどのスポーツ障害が急増している。そこで、本研究では中高齢者の全身運動をするために腕部や足部に微小な負荷変動が可能な運動補助機器を開発する。中・高齢者が全身運動を行っている時に、ランダムに負荷振動を発生させ、その振動に瞬時に反応する。また、本装置は座位での運動補助装置となっている。中・高齢者の場合は立位では転倒の危険性が考えられるが、座位では転倒の危険性が大幅に低減されるため、高齢者にとっては安全な機器となっている。これまでに揺動運動を利用して筋力等の能力を向上させるトレーニング装置は開発されてきたが、本提案のような微小上下振動の機構には独創性がある。 次に、試作した運動補助機がユーザにどの程度の効果があるかその有効性を示す必要があると考えられる。そこで、試作した運動補助器具をユーザが利用し、その有効性をモデルベースシミュレーション技術により評価する。モーションキャプチャシステム(Vicon)を利用した生体情報計測技術と、下肢運動に重要となる筋骨格モデルを利用したモデルベースシミュレーション技術により利用者の各関節や筋肉にどのような力が発生しているかを評価する。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
ユーザの能力を考慮したナノ負荷変動を有する運動補助機器の実験機を試作した。この実験機はバケットシートを利用してユーザの座位保持能力を確保した。運動の負荷調整は運動負荷の幅が大きく、また、その負荷の分解能も細かくするためにデュアル負荷方式とした。まず、運動負荷の調整幅の強弱が大きくできるように発電機と減速機を組み合わせた機構とした。この機構により運動機能が健常なユーザ群には高負荷となるように高い減速比を用い、高齢者・障害者のように運動機能が低下しているユーザ群には低負荷となるように低い減速比を用いる機構とした。次に、各ユーザ群においてもテイラーメードで微小な負荷調節が可能なように発電機の回生抵抗の変化を負荷に利用した。 実験機に対して、その強度や耐久性の検討と共に利用者への効果の評価も必要である。実験機をユーザが利用したときにユーザにどのような効果があるかを定量的に評価するために、モーションキャプチャー装置(赤外線カメラ8台のシステム)と力センサーを同期させた評価システムを構築した。モーションキャプチャー装置によりユーザの各関節の動きを測定する。例えば上肢は肩の関節、肘の関節、手首の関節などの動きを計測し、下肢は足首の関節、膝の関節、腰の関節などの動きを計測する。この各関節の動きと同時に足部ペダルに力センサーを取り付けることで足の踏み込み力が測定できるシステムとした。 以上のように今年度は概ね順調に進展した。
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今後の研究の推進方策 |
これまでに運動補助機器の実験機を製作した。今後は運動負荷を微少振動する電気設計とプログラムを構築するとともに、モデルベースシミュレーション技術により利用者の各関節や筋肉にどのような力が発生しているかを評価する。 ユーザに合わせたテイラーメードの微少振動の運動負荷を与えるために発電機の回生抵抗をPWM制御で変化させる電気回路の設計と試作を行う。また、負荷の設定変更はパソコンから可能なようにGUI(グラフィカル・ユーザーインターフェース)を考慮してプログラムを作成する。ユーザが運動補助器を利用した様子をこれまでに構築した各関節の軌跡と足部の蹴り力を計測するシステムを利用して、重心や関節軌跡・角度で評価する。また、剛体リンクモデルを用いて、足関節、膝関節、股関節等の負担となる関節モーメントを評価する手法を構築する。現状のシステムでは各関節の軌跡と足部の力センサー情報は同期して測定が可能であるが、異なった計測システムを利用しているため座標変換や変化する原点の位置を工夫してユーザにかかる負担を評価する必要がある。
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次年度使用額が生じた理由 |
理由 本年度の実験に利用した足部の踏み込み力を測定するセンサーが、すでに導入済みのセンサーの接続部のみの変更で利用可能であったので未使用額が生じました。 使用計画 次年度の実験で利用する計測システムのセンサーにおいて高速・高精度化に対応するために物品費として使用する予定です。
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