研究課題/領域番号 |
17K01605
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研究機関 | 石川工業高等専門学校 |
研究代表者 |
藤岡 潤 石川工業高等専門学校, 機械工学科, 准教授 (20342488)
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研究分担者 |
宮下 大輔 長野工業高等専門学校, 機械工学科, 准教授 (70353274)
川除 佳和 石川工業高等専門学校, 電子情報工学科, 准教授 (90552547)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 感圧シーツ / 機械学習 / 体圧分布測定 / 褥瘡予防 |
研究実績の概要 |
本年度は昨年度製作した無配線感圧シーツにより,就寝者の体圧分布測定を行った.さらに機械学習により,測定結果から就寝者の特定と就寝姿勢の識別を実施した.無配線感圧シーツは縦2m×横1mで,40mm四方の感圧部が400箇所あり,就寝者の詳細な体圧分布測定が可能である.また導電繊維製の縦じまを編み込んだ生地を直交させながら4枚重ねて使用しており,感圧部からの一切の配線を必要としない.そのため,一般的な家庭用寝具すべてにおいて,寝具の上に広げるだけで,就寝時のモニタリング化可能となる.これにより,寝たりきりの高齢者や要介護者の就寝時の加圧部を容易にストレスなく特定できるため,褥瘡の早期発見や予防に活用できることから,大変意義深いシステムを実現できたと考えられる.本年度は実際の測定値から機械学習により就寝者の特定と,褥瘡好発部の特定と判定を行うためのソフトウェア開発を行った.シーツの測定結果を色勾配を付けた画像保存し,機械学習(cNN)により画像判別を行った.本手法により,シーツ上の就寝者の特定が高い確度で判別可能であることが明らかとなった.さらに画像を区切り,就寝姿勢と褥瘡好発部位の特定を現在行っている.また褥瘡好発部をはじめとする寝具との接触圧とその時間変化をモニタリングし,携帯端末から就寝状況の確認と,褥瘡兆候が見られる場合に警報を発するアプリケーションを開発した.これにより,遠隔地から就寝者の就寝状態をモニタリングすることが可能となり,システムの実用性が向上したと考えられる.また来年度に向けて,シーツの計測と通信部分について,基板と筐体を製作し,携帯性の高い装置を開発した.同装置により,本システムの外部機関等における測定,試験が可能となった.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究課題の進捗について,当初の予定通り,初年度中に新たにAg-ナイロンによる導電繊維から糸を製作し,これを用いた無配線感圧シーツの製作した.また,マトリクススキャン方式による測定回路とwifi無線システムを含む計測システムの開発も完了した.昨年度は,測定した結果を学習データとして,機械学習により就寝者の認識と,褥瘡好発部の特定を行った.さらに寝床内の温度環境等の測定を行うための手法を新たに開発し,試験測定を行った.これらの結果から,褥瘡予兆の検知を行うことが可能となったことから,2年目についてもおおむね順調に進展していると考えられる.またシステムを運用するためのアプリケーションについても,測定情報と認識結果をクラウド化し,携帯端末から必要に応じて就寝姿勢や就寝状況,褥瘡の危険性などをモニタリングできる観測アプリを製作した.これにより,遠隔地から実験室で就寝している被験者のこうした情報を閲覧する,遠隔モニタリング実験も実施し,良好な結果が得られた. 現在のところ当初予期していない状況は発生していないが,今後実際の臨床などを行うにあたり,デバイスの可搬性や利便性,使用者による個人的な調整等が必要になると考えられるが,こうした点を含めても進捗に大きな遅れが生じることは無いと思われる.
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今後の研究の推進方策 |
昨年度までに,デバイス開発および就寝姿勢や褥瘡好発部位の特定を含む計測システムと,実際に遠隔地からモニタリングを行うためのアプリケーションの作成は完了した.本年度は申請の最終年度であり,開発したシステムの実地試験と評価,およびその取りまとめを行う予定である.システムの試験のため,デバイス(シーツ)を含むシステム全体の可搬性と取り扱いやすさを改善する.また外部機関での臨床等のため,共同研究先を含め,関係各所への協力依頼を行う予定である.この試験に当たり,現在は一組のシステムを試験的に運用しているが,研究の効率的な推進のため,複数の期間において並行して試験を行いたいと考えており,同様のデバイスとシステムを複数量産の予定である. 以上の測定及び評価結果について,本年度中に取りまとめて,年度末の日本機械学会および日本繊維機械学会等で発表する予定である.またHP等で研究及びその成果について公開する. 研究計画については大きな変更はないが,実地での試験に当たり,利便性や使用者からの要求が生じることは十分に考えらえる.特に就寝時の寝心地や睡眠の阻害などが生じないよう,要求に応じて細やかにデバイスの改良を行うことで,より実用性の高いシステムの完成を年度中に達成したいと考える.
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次年度使用額が生じた理由 |
来年度の実地試験のための,デバイスとシステムを複数台量産する予定であるが,現在デバイスの素材の製作の打ち合わせのため,年度をまたいだ調整を行っており,仕様が定まり次第発注予定である.また実際の製作にあたっては,県内メーカの編み機の日程調整も必要であり,こちらもメーカの状況を踏まえて生産日程の調整を並行して行っている.以上ような状況のため当該年度の予算としては製作のための費用について次年度使用額が生じた.
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