研究実績の概要 |
申請者は前年、CO2再呼吸中に呼吸亢進が誘発されるだけでなく、脊髄運動ニューロンの自己持続的活動(self-sustained motoneuron activity)を反映するとされる自己持続的筋活動(self-sustained muscle activity, SSMA)が増加したことをヒラメ筋表面筋電図(EMG)で確認した(Respir Physiol Neurobiol, 2018)。これは、脳幹に存在する中枢化学受容器(CO2感受性領域)が、呼吸の制御だけでなく下肢運動の制御にも関与している可能性を示唆しているのではないかと考えられた。 当該年度は、脊髄運動ニューロンの興奮性の指標としてH反射とF波を測定項目に加え、吸入CO2濃度(4%と7%)がヒラメ筋のEMG応答(SSMA、H反射、F波)に及ぼす影響(実験1)および呼吸条件(CO2再呼吸、低O2吸入、随意過換気)がヒラメ筋のEMG応答(同上)に及ぼす影響(実験2)を調べた(進行中)。その結果、実験1では、H反射およびF波は条件間に有意な差は認められなかった。SSMAについては、統計分析に必要なサンプル数を確保することができず比較ができなかった。実験2では、H反射、F波に条件間での有意な差は認められなかったが、CO2再呼吸時にSSMAが増大する傾向が認められた。このように、当該年に実施した二つの実験では先行研究を支持する結果は得られなかった。
|