研究実績の概要 |
本研究では、脳幹に存在する中枢化学受容器へのCO2 刺激が、呼吸亢進を誘発するだけでなく、四肢筋の運動を脊髄レベルで修飾している可能性を見出している。当該年度においては、脊髄運動ニューロンの自律性活動を反映するとされる自律持続性筋活動(self-sustained muscle activity, SSMA)をヒラメ筋で評価することにより、中枢化学受容器と運動制御の関連を明らかにすることを目的に、前年度より継続中の実験を実施・完了した。 すなわち、健常成人男性を対象とし、CO2混合ガス吸入(4% or 7%CO2, 21%O2, N2 balance:各2分、実験1)および呼吸条件(CO2再呼吸、低濃度O2ガス(15.8%)吸入、随意過換気:各2分、実験2)がSSMAに及ぼす影響を調査した。その結果、CO2混合ガス吸入(4%)によりSSMAが有意に増加すること(実験1)、CO2再呼吸条件でのみSSMAが有意に増加すること(実験2)が確認され、中枢化学受容器へのCO2 刺激がヒトにおける四肢の神経筋活動を増加させる可能性が示唆された(motor control 研究会にて発表)。 一方、CO2再呼吸(3分)を反復させると(1分の安静呼吸を挟んで5回)、2回目以降にヒラメ筋のH反射が有意に低下する(F波は変化しない)ことが確認され(実験3)、中枢化学受容器へのCO2刺激が脊髄レベルで抑制的に作用する可能性も示唆された。
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