研究課題/領域番号 |
17K01615
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
守田 知代 大阪大学, 工学研究科, 特任講師(常勤) (60543402)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 自己顔 / 単語 / 脳発達 / 機能的MRI / 高次視覚野 |
研究実績の概要 |
平成30年度は、学童期の子供(8~11歳,20名)が自己顔認知および単語生成を実施している最中の脳活動を機能的MRIを用いて計測した。すでに、成人では自己顔認知には右半球に側性化した活動が、単語生成には左半球に側性化した活動が、高次視覚野(下側頭回:ITG)に対称的な位置に存在することを確認しているが、これらの自己顔ITG(右)および単語ITG(左)の活動は、子供では認められなかった。活動パターンを詳細に分析すると、学童期では右ITGが自己顔と他者顔に対して同等の強さの活動を示していたことから、自己顔に対する選択性がまだ形成されていないものと考えられる。さらに、学童期の子供でも言語生成に選択的な活動が、左半球の前頭頭頂領域(ブローカー領域など)には認められた一方で、これよりも一般に低次領野と考えられている左半球ITGにはこうした言語生成に選択的な活動は認められなかった。加えて、ある特定領域の活動がどの程度片半球に偏っているのかを表す指標(側性化指標:LI)を用いて解析したところ、成人では有意にみられた自己顔ITGの右半球側性化や単語ITGの左半球側性化は、いずれも学童期には存在していないことが明らかとなった。これらの知見から、高次視覚野にあたるITGは左右ともに、ある特定の情報を選択的に処理するようになるまでには10年以上の年月を要し、ITGと機能的結合のある前頭頭頂のネットワークの成熟よりもさらに遅い時期に成熟する可能性が示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の予定通り、平成29年度に成人対象の実験を行いながら適切な課題を選定し、平成30年度に小学生を対象とする脳計測を開始できた。2019年度には中学生を対象とする実験の準備が整っており、おおむね順調に進行していると思われる。
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今後の研究の推進方策 |
今後は、これまでの結果を踏まえて、より高い年齢の子供(中学生)を対象とした脳計測実験を実施する予定である。自己顔ITGおよび単語ITG領域の形成時期を特定し、左右半球間での機能分化形成の過程を明らかにする。
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次年度使用額が生じた理由 |
学会発表のために旅費を計上していたが、日程の関係で予定していた国際学会に参加しなかった。使用しなかった旅費はそのまま次年度に使用する計画である。
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