研究課題/領域番号 |
17K01616
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研究機関 | 県立広島大学 |
研究代表者 |
福場 良之 県立広島大学, 人間文化学部, 教授 (00165309)
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研究分担者 |
山岡 雅子 (遠藤雅子) 県立広島大学, 人間文化学部, 教授 (30336911)
鍛島 秀明 県立広島大学, 人間文化学部, 助教 (40714746)
宮地 元彦 国立研究開発法人医薬基盤・健康・栄養研究所, 国立健康・栄養研究所 身体活動研究部, 部長 (60229870)
林 直亨 東京工業大学, リベラルアーツ研究教育院, 教授 (80273720)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 血管内皮機能 / 血流 / 局所温冷刺激 / 運動 |
研究実績の概要 |
2年間の研究成果から,本年度は,上下肢を入れ替え,下腿部皮膚への温熱刺激の影響を検討した。下肢への伝導血管は浅大腿動脈(SFA)と大腿深動脈(PFA)で構成されているので,両血管のシェアストレス(SS)を分けて観察した。若年の成人男女9名が,30分間の仰臥位安静後,片脚の下腿を42℃の水に(加温肢),反対側の下腿を対照として30℃の水に30分間浸漬した。1試行を通して,SFAあるいはPFAのいずれか一方の血流速度および血管径を,超音波ドップラー法を用いて測定し,SSの指標であるシェアレート(SR)を算出した。試行中を通して,両下腿の皮膚血流を連続的に測定した。脚の浸水中,下腿の皮膚血流は加温肢では著しく増大した。SFAの血管径およびSRは,加温肢のみで著しく増大した。PFAの血管径およびSRは,両肢で変化しなかった。従って,下腿への加温によるSSの増大は,下腿の組織へ血液を供給する血管でのみ生じることが示唆された。また,大腿動脈血管内皮機能を血流依存性血管拡張反応(%FMD)で評価しようと試みたが,カフ解放直後の画像描画が,通常の上腕動脈血管の場合と比較して,その動きが不規則で激しく描画が困難であり,うまく施行できなかった。この点は将来への課題である。 下肢による一般的な運動トレーニングが非運動肢の上腕動脈の血管内皮機能へ与える効果についての実験も当初の予定通りに行った。被験者をトレーニング(T)群と対照(C)群にランダムに分けた。トレーニングは,脚自転車運動(心拍数:約130bm相当強度)を60分,週3回の頻度で4週間継続した。介入前後に血管内皮機能の評価を行った。T群では,peakVO2は有意な増加したが,%FMDは増加傾向ではあったものの統計的に有意ではなかった。C群ではいずれの測定項目でも有意な変化はなかった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
当初の予定通りにトレーニング実験を行ったが,結果は,仮説通りにはならず,統計的には有意なトレーニング効果が認められないものであった。しかし,1・2年目の成果にヒントを得て,上肢と下肢を入れ替えた条件設定による実験を,当初の予定に加えて行い,計画段階では予想されなかったような成果をえることができた。従って,結果としては,「計画以上に進展した」と判断される。
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今後の研究の推進方策 |
大腿動脈のFMD測定法の確立:大腿基部へカフを装着して,大腿動脈血管内皮機能を血流依存性血管拡張反応(%FMD)で評価しようと試みたが,カフ解放直後の画像描画が,通常の上腕動脈血管の場合と比較して,その動きが不規則で激しく描画が困難であり,うまく施行できなかった。この解決は,将来への課題である。また従来の%FMD測定法にはいくつかの大きな方法論上の問題点が存在することがわかったので,これらの解決も将来の課題としてあげられる。
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次年度使用額が生じた理由 |
コロナウイルス感染拡大によって2019年3月に開催予定だった日本生理学会において,演題登録済みで公表予定であった本年度の研究成果の一部を発表することができなかったため,その経費を次年度へ繰り越し,しかるべき学会で発表する予定である。
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