研究課題/領域番号 |
17K01617
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研究機関 | 日本電信電話株式会社NTTコミュニケーション科学基礎研究所 |
研究代表者 |
谷部 好子 日本電信電話株式会社NTTコミュニケーション科学基礎研究所, スポーツ脳科学プロジェクト, リサーチスペシャリスト (30582829)
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研究分担者 |
本間 元康 杏林大学, 医学部, 助教 (20434194)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 時間知覚 / パーキンソン病 / 大脳基底核 / アルファ波 / ベータ波 / ドパミン系 / 身体運動 |
研究実績の概要 |
[当該年度に実施した具体的内容] #1 代表者は近年、健常若年者が感覚イベントに反応して身体運動を起こすと、その刺激の生起タイミングは遅れて(即ち身体運動に近づいて)知覚されるという運動と感覚イベントとの時間的結合を発見した。本研究は「運動と感覚イベントとの時間的結合に線条体ドパミン系が関与していると」予想し、29年度にはドパミンを欠く疾患であるパーキンソン病患者群およびその年齢一致統制群・若年統制群でレボドパ(脳内ドパミンレベルを上げる薬剤)投与ありなし2条件にて時間的結合の測定を実施した。30年度、この実験の結果を解析、パーキンソン病患者では時間的結合が生じず、逆に離反する(感覚イベントのタイミングを早いものとして知覚する)という結果を得た。さらにパーキンソン病患者の年齢一致統制群の結果をつぶさに検証した所、薬剤投与なし条件でパーキンソン病患者と同様の時間的離反を示した健常者ほど、レボドパ投与による効果が大きい(即ちレボドパ投与後に時間的離反が消失する)ことがあきらかになった。 #2 本研究は大脳基底核の活動が脳波(アルファ・ベータ帯域)を介して時間的結合の変調をもたらすという予測に基づき開始されている。29年に取得した脳波データの解析を実施し、運動準備中の頭頂のベータ帯域パワーおよび運動をトリガーする刺激直前の右側頭アルファ帯域パワーが寄与することを解析した。前者の情報が後者にて集約され、それが時間的結合をもたらすと予想される(投稿準備中)。 #3 時間的結合への大脳基底核の寄与(上記#1)と皮質から測定されたアルファ・ベータ波の寄与(上記#2)とをつなぐため、MR撮像の準備を開始した。 [意義と重要性]#1健常高齢者での結果は、時間知覚課題を用いればパーキンソン様の運動障害(転倒など)を示す前にドパミンの低下を抽出できる可能性、即ち疾患の早期発見の可能性を示唆する。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
研究代表者の移籍にともない倫理プロトコルの再申請や使用できる機材を全面的に見直し、体制を整えなおすこおとが必要となった。研究準備段階にあった#3は特にこの影響を被ったが、移籍前にMR撮像プロトコルはすでに確立していたため、最終年度で実施するのは可能である。
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今後の研究の推進方策 |
時間的結合への大脳基底核の寄与(研究実績の概要#1)と皮質から測定されたアルファ・ベータ波の寄与(研究実績の概要#2)とをつなぐため、MR撮像および脳波測定(身体運動課題)を実施する。 ~6月 倫理プロトコル承認 ~9月 実験 ~3月 解析・結果のまとめ
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次年度使用額が生じた理由 |
研究代表者・分担者とも所属の移動があり、使用できる時間が限られていた。昨年度から本年度に繰り越して実施する実験(MRIほか)にて使用する。
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