研究課題/領域番号 |
17K01620
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研究機関 | 日本大学 |
研究代表者 |
村岡 哲郎 日本大学, 経済学部, 准教授 (30398929)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 肢間神経回路 / 短潜時伸張反射 |
研究実績の概要 |
一定姿勢を維持している際の両上肢間の反射機構を調べるための実験を行い,片方の肩関節に肩関節伸展または肩関節屈曲の外乱パルスを与えた時,外乱を与えていない反対側の肩関節伸展筋(三角筋後部)および肩関節屈曲筋(大胸筋)に短潜時および長潜時反射が生じる事が初年度に示された.本年度は,両方の肩関節に同時に外乱パルスを与えた時のデータ,外乱パルスの大きさを変化させた時のデータ,測定ロボット(KINARM)の関節角度データの詳細を検討するために身体に直接貼付した関節角度計(ゴニオメータ)のデータを解析した.その結果,初年度で得られた実験結果が測定ロボットで計測できない関節角度変位によるものではない,つまり,初年度の実験結果が妥当であったことが示された.また,両方の肩関節に同時に外乱パルスを与えた時の結果および外乱パルスの大きさを変化させた時の結果から,両上肢間の反射活動様相に関する考察をさらに深める事が出来,実験結果全体を説明しうる両上肢間の神経回路図を描くことができた.すなわち,対側への肢間短潜時反射は,抑制性の場合には両肩関節へ同時に外乱パルスを適用しても影響を受けないが,興奮性の場合には両肩関節へ同時に外乱パルスを適用するとその影響を受けたことから,対側への短潜時反射をひき起こす抑制性の神経経路と興奮性の神経経路は経路が異なっており,前者は同側での肢内伸張反射経路から独立しており,後者は共通の神経細胞に収束があるということが示唆された.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
2020年1月に渡米し,研究協力を頼んでいるニューヨーク工科大学のKurtzer博士と集中的にディスカッションを行い,その結果完成させた本科研費課題の研究成果をまとめた論文は専門誌に掲載されるに至った.その後にKurtzer博士と遠隔で行ったディスカッションを通じ,残りの研究成果を論文としてまとめるにはいくつか追加の実験データが必要であるとの共通認識に至った.しかし,2月以降は研究を順調に推進させる事が出来なかったため,若干の遅れが生じ,研究期間を延長することとなった.
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今後の研究の推進方策 |
リーチングの研究を肩関節屈曲動作を用いる実験で確かめ,さらに,実験結果を説明するモデルを発展させるために,肩関節伸展動作の動作目標を変化させた時の反射活動様相を確かめる.
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次年度使用額が生じた理由 |
研究協力を頼んでいるニューヨーク工科大学のKurtzer博士との研究が順調に進まず,研究期間を延長することとなり,また,次年度使用額が生じた.使用計画としては,リーチング中の伸張反射ゲインがどのように調節されているかを明らかにするため,前年までと異なる実験条件(動作を肩関節屈曲とする,リーチングゴールの大きさを変化させる)においても確かめ,その結果を論文としてまとめる計画である.
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