令和元年度は、29年度に実施した先行実践、さらに30年度に実施した本実践を踏まえた実践と分析を進め、ガイドブックを作成した。 29年度は熊本県益城町の1小学校4学級を研究対象に、1単元3時間の体つくり運動の実践を実施した。30年度は、31年1月~3月にかけて熊本県甲佐町と嘉島町の3小学校20学級を研究対象とし、29年度と同様の実践を拡大して行った。そこでは、限られた狭い空間でも実施可能であり、スキンシップを伴う運動遊びが、児童の短期的なストレス軽減につながるのか検証することを目的とし、橋本(2011)が作成した改訂版ポジティブ感情尺度を用いて質問紙調査を実施した。その結果、児童のポジティブ感情は、授業の前後で向上し、単元前後でも向上した。 また、短期的な実践だけでなく、長期的な実践も行った。岐阜県本巣市の小学校2年生1学級を研究対象とした。体育授業の導入時に10分程度主運動につながる運動遊びを行い、30年9月から12月までの4ヶ月間継続して実施し、毎週金曜日に児童のストレスの状況について上地(2016)が作成した3A評価尺度を用いて調査した。その結果、有意差はないものの、児童の心理状態は好転し、天井効果が見られた。また、児童の多くが業前業間に積極的に外遊びをするようになった。 令和元年度はこれまでの実践の成果を第70回日本体育学会(慶応大学)、第39回日本スポーツ教育学会(早稲田大学)で発表するとともに、ガイドブックを作成し、広く公開した。なお、ガイドブックは(公財)日本スポーツ協会のホームページでも公開している。 本研究は、自然災害後の体育授業において、限られた環境の中でも実施できる、そして心理社会面を強化できる体育授業プログラムを作成することを目的としたが、その目的は概ね達成された。
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