本研究課題が目指すのは,幼少期におけるからだを動かす遊び経験における,非認知能力の醸成に関連する規定因と機序を明らかにすることである。本研究における「からだを動かす遊び」とは,身体活動,運動遊び,集団ゲーム遊び,身体表現遊び,戸外遊び,自然体験など保育現場で用いられている呼称を,こころの動きを含んだ「まるごとのからだ」を「活発に動かして」行う「遊び」の総称として定義する。 本課題期間では,幼少期のからだを動かす遊び経験が,その後の非認知能力の発達に影響を与えるという仮説を,定性的,定量的の両面から分析検証した。パーソナリティ特性因子別,それぞれの特性の双極によって,さらには社会情動的スキル別に関連を分析すると,幼少期のからだを動かす遊びの経験に対して異なる傾向の特徴的な経験を語る傾向が見られた。同時に,現在の自分の非認知能力としての性格特性,社会情動的スキルと,遊びの中で味わった質との関係に共通性が見られ,幼少期に経験した遊びに対して,固有の主観的恩恵を感じている様相が捉えられた。個人の内外の様々な要因によりバイアスがかかってはいるものの,幼少期のからだを動かす遊び経験が影響を与えているという本研究の仮説が支持されたと考え,幼少期のからだを動かす遊び経験は,非認知能力の醸成に影響を与えることが示唆された。 2020年最終年に,これらの成果を国際学会等で発表する計画であったが,コロナ感染拡大により中止となったため,研究期間を延長した。2021年度には,オンライン開催ながら発表を遂行し論文としてまとめた。 今後は,長期的前向きな縦断的調査が必要と考える。今回の調査は,非認知能力としてのパーソナリティ特性と,幼少期のからだを動かす遊び経験経験との関連が絞られたことから,対象とすべきコホートや,測定すべき要因や帰着点の観点などの示唆的な視点を獲得することができたと考えられた。
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