まず,昨年度試案した「アクティブ・ラーニングによる体育学習モデル」に基づいた授業実践を行い,昨年度,中学1年生を対象にして得られた結果が小学生中学年でも同様の結果を得られるかを確認しようとした。その結果,AL群(アクティブ・ラーニング群)の児童のスキルテストの成績の伸びは,NL群(従来の授業群)の伸びよりも,大きいことが示され,その背景には,単元を通して設定された「共通技(倒立系技)」による腰角の増大が関係していることが考えられた。また,対象者の活動時の発話分析によると,AL群のグループ学習からは,多くの共感的な言葉が生まれ,それが内化と外化の重要な土台になっていることが示唆された。以上のことなどから,「アクティブ・ラーニング」による単元においては,「主体的,対話的で深い学び」を促進させ,学習成果に効果的であったことが示された。 次に,中学生を対象に,実技の授業を「体育理論」に代表される知識の学習と関連させた学習プログラムを作成・実践するとともに,その成果について検討した。その結果,実技と体育理論の授業を関連させるタイミングは,今回の内容であれば,実技の授業(長距離走)の前に体育理論(「人々を結び付けるスポーツの文化的働き」)の授業を行った方が適切であることが示唆された。それは,インプットされた「知識」は実体験を通すことで質的に転化し「智恵」になるという日高らの指摘に通じるものである。また,スポーツイベントである「校内駅伝・ロードレース大会」に「支える」立場で関わることで,生徒たちが主体的に作り上げるイベントにすることができた。このことは,多くの本校職員の感想からも窺える。さらに,従来のペースを重視した学習だけではなく,「かけひき」にも着目させ「競走」を意識させたことで,長距離走の本質的な面白さに触れさせることができ,意識の変容や技能の伸び(タイムの向上)に繋がった。
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