研究課題/領域番号 |
17K01644
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研究機関 | 和光大学 |
研究代表者 |
大橋 さつき 和光大学, 現代人間学部, 准教授 (60313392)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 発達障がい児 / 気になる子 / 就学支援 / 身体表現遊び / ムーブメント教育 |
研究実績の概要 |
本研究の目的は、気になる子を含んだ発達障がい児の就学支援に役立つ身体表現遊びのプログラムを開発することである。本研究において明らかにしたいことは、次の4点である。(1):発達障がい児の就学支援における、(ムーブメント法を土台とした)身体表現遊びプログラムの適用の可能性。(2):保育所・幼稚園、小学校を中心に、子育て支援、療育機関等、就学移行期の発達障がい児の支援に携わる様々な機関において実践でき、それらの機関の連携を促しながら、横断的かつ継続的に子どもの育ちを支えることができる身体表現遊びのモデルプログラムの内容。(3):(2)で示したモデルプログラムに対する保育者・教師・支援者や保護者の評価とそれらに基づく改良点。(4):(3)で改良したモデルプログラムを実際に発達障がい児の就学支援として適用した場合の効果や課題。 平成29年度は、本研究の初年度として、以下【研究1~3】の基盤研究に取り組んだ。 【研究1:発達障がい児の就学支援に関する先行研究の調査】発達障がい児の就学支援に関する先行研究やモデルとなる各地域の実践的取組みについて明らかにし、本研究の課題を整理した。 【研究2:発達障がい児を対象としたダンス・身体表現活動に関する先行研究の調査】発達障がい児を対象としたダンスや身体表現の活用について、特に保育所・幼稚園、小学校、特別支援学校における実践を調査し、本研究の課題を整理する。文献調査を中心とした。 【研究3:運動遊び(ムーブメント)活動による発達障がい児の就学支援の実際】本研究の基盤となる運動遊び(ムーブメント教育)活動を継続的に実施している保育、特別支援教育、療育等の現地調査を行い、就学移行期にある(あった)気になる子及び発達障がい児を対象とした支援の事例や実績について明らかにし、適用の可能性と展開のポイントを探った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
【研究1~3】は順調に進み、特に、先行研究をもとに、幼稚園や保育所等における「アプローチカリキュラム」の要素の文献調査を行なった。また、発達障がい児や気になる子を対してムーブメント活動を継続的に実施している保育、特別支援教育、療育等の現地調査及び聞き取り調査を実施した。 それらを受け、次年度実施予定の【研究4:発達障がい児の就学支援に役立つ身体表現遊びモデルプログラムの考案】に先かげて、K市の地域行政機関の協力を得て、就学前児童を対象に実践した地域子育て支援の集団遊びプログラムの考案、実践を試みた。「地域子育て貢献事業就学前児童交流会」として、地域に在住する次年度小学校入学予定の児童が互いに交流する機会を持つことをねらいに掲げ、公募により集まった児童とその保護者を対象にモデルプログラムを実施した。 また、Y市にある放課後等デイサービスにおいては、現地スタッフの協力を得て、小学校入学年次の発達障がい児を対象に観察調査の後、個別プログラムの検討、実施を行なった。 2年度以降の実践研究に向けて、協力機関との連携が深まり、予定どおり研究目的を達成できると考えられる。
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今後の研究の推進方策 |
今後は、実際の適用に向けて関係機関の協力体制を確認しながら地域における試行的実践研究を進める予定である。 特に、2年目となる平成30年度は、これまでの研究協力の実績、初年度の調査に基づいて、協力機関を軸に、いくつかの地域における実施にむけて検討を開始する。まずは、【研究1~3】の結果をふまえ、【研究4】【研究5】を実施する。 【研究4:発達障がい児の就学支援に役立つ身体表現遊びモデルプログラムの考案】【研究1~3】の結果に基づいて、発達障がい児の就学支援に向けた身体表現遊びのモデルプログラムを考案する。発達障がい児・気になる子どもの保育所・幼稚園からの小学校への円滑な接続に役立ち、関係機関で実施可能で連携を促すための具体的なプログラムを考案する。 【研究5:保育者・教師・支援者および保護者によるモデルプログラムの評価に関する調査】地域の発達障がい児の支援に携わる保育者・教師・支援者および保護者を対象に、【研究4】によって考案されたプログラムを提示し、アンケート調査及び聞き取り調査を行う。現場のニーズと照らし合わせながら、考案したプログラムの可能性や課題について考察する。【研究4】と【研究5】を繰り返し実施し、ここで得た知見をもとに、モデルプログラムの改良を重ねる。 3年目の平成31年度から最終年度となる平成32年にかけては、【研究6:就学移行期にある発達障がい児を対象としたモデルプログラムの実施】を実現させ、【研究7:本研究のまとめと報告】として成果報告や発表を行なう予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
本年度の研究計画では、関連する実践を継続的に行なっている保育、特別支援教育、療育等の現地調査を行う予定であったが、これらのうち遠方の地域における取組みについて熟知している実践研究者を招き、関連する資料の提供と共に詳しい解説を受けた。専門的知見に対する謝金の支出を行なったが、現地調査のために計上していた旅費を大幅に減額することができた。 次年度においては、既に学会発表の予定も組まれており、中間発表としての成果報告を積極的に行なうための旅費や学会参加費にあてる。また、具体的なプログラム開発、実践における消耗品や遊具の購入のための予算、実践データの記録、整理、分析作業のための人件費を増額する予定である。
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