本研究は、看護学生を対象としたボディワークプログラムの構築とその効果検証を目的としている。特に看護学生のふれる・ふれられることへの抵抗感を減じ、対象を人として尊重した「ふれる」ことを学ぶための教育プログラムの開発を行うことを目的としている。学生のふれる・ふれられることへの抵抗感や苦手意識に、人間関係の課題があることが示唆されたことから、からだを通して人間関係構築の基礎を育むことをベースとして、徐々にふれる試みを増やし、ふれることに対して意識的になるよう構成した。2019年度も引き続き、プログラムの実施とデータ収集を行い、握手やふれることに対する継続的な変化を検討した。プログラム全体を通して実施した握手は、第3回目までに「緊張しなくなった」ことや「慣れ」が報告された。同時に、学生は握手や他の実習の分かち合いを通して自己理解、他者理解を深めており、関係構築が進んだことが示唆された。後半には、握手やふれあいに対して肯定的な表現が増え、プログラム終了後、ふれることは「安心感を与える」「相手を知ること」「コミュニケーション」であると捉えられ、抵抗感は減じていた。一方、苦手意識が残る学生も、同じような感覚を有する他者や患者を想定し、体験をもとに、どのような働きかけやふれ方が安心感をもたらす関わりとなりうるか、考えを発展させており、そのことは、分かち合いを通して、ふれあいへの抵抗感の少ない学生にも考察の機会を与えていた。2019年度後半には、研究代表者がBody-Mind Centeringの創始者であるBonnie Bainbridge Cohen氏のEmbodied Touchのワークショップに参加し、ふれることそのものへの理解を深め、対象を尊重した「ふれ方」に関して学ぶことができた。今後のプログラムに反映させていく予定である。
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