研究課題/領域番号 |
17K01649
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研究機関 | 京都学園大学 |
研究代表者 |
吉中 康子 京都学園大学, 教育開発センター, 特任教授 (80166983)
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研究分担者 |
木村 みさか 京都学園大学, 健康医療学部, 教授 (90150573)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 地域包括ケアシステム / 1分間体操 / 人材養成 / 健康寿命延伸 / 運動記録 / お宝ノート |
研究実績の概要 |
高齢者の増加に伴い、医療費の増大、介護供給の不足が深刻化することが懸念されているが、それは平均寿命と健康寿命に差があることに由来する課題である。そこで、運動が生活習慣として定着していない一般成人へのアプローチとして、1日1回1分間をキャッチコピーに、神経と筋肉の伝わりをよくすることを狙って、1分間体操を制作した。音楽著作権の問題をクリアーできることなどを条件に選曲し、天国と地獄の序曲として誰でもが知っている「カンカンポルカ」を選んで、1分間の簡単な体操を制作し「伝わり体操」と命名し、CDとDVDを制作し、youtubeでも公開した。地域包括ケアシステムでも介護予防が重要視される中、誰でも、どこでも利用できる。 この伝わり体操については60-80歳代の健常男女における運動ユニット機能(筋放電量、筋線維伝導速度等)と各種体力(歩容、筋力、敏捷性、平衡性等)との関連性についても併せて解析することを目的に2か月間、1日1回、1分間の体操を実施する介入研究を終了し、Bioscience, Biotechnology, and Biochemistryに投稿した。次に、伝わり体操とウォーキングの運動生理(心拍数・呼気ガス・筋電図の関係)について検証し、音楽のテンポの違いによる身体の変化を探って、論文にまとめJournal of Exercise Physiologyonlineに投稿した。 また、平均寿命と健康寿命の差である男性約9年、女性約12年は、日常生活に制限のある「健康ではない期間」と考えられ、この短縮が大きな課題となっている。そこで、運動が生活習慣として定着していない人のために、1分間体操などで健康長寿を目指し、食事と運動をチェックし記録する「かめおか健康長寿お宝ノート」を制作し、介護予防を進めたい人へのプログラムとして、亀岡市のHPで公開している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
現在、厚生労働省では地域包括ケアシステムの構築を目指している。具体的には、団塊の世代が75歳以上となる2025年を目途に、重度な要介護状態となっても住み慣れた地域で自分らしい暮らしを人生の最後まで続けることができるよう、医療・介護・予防・住まい・生活支援が一体的に提供される地域包括ケアシステムの構築を実現する計画である。高齢者人口の増加、あるいは地域人口の減少によって、市町村や都道府県が抱える課題は深刻化を増し、地域の特性に応じて地域包括ケアシステムを作り上げることが必要である。 そのため単に高齢者の運動機能や栄養状態といった心身機能の改善だけを目指すものではなく、支援する人材の養成やプログラムとその展開の仕組みが重要である。加えて、高齢者の日常生活活動を高め、家庭や社会への参加を促し、一人ひとりの生きがいや自己実現のための取組を支援して、QOLの向上を目指す仕組みが必要である。 そこで、従来から継続してきたスポーツ・芸術・文化の垣根を越えた「かめおか遊友ネットワーク」という組織団体の地域展開をステップアップし、介護予防終了後の活動的な状態を維持するための多様な通いの場を創出し、次のステップへと繋げた。このような体制づくりとともに、高齢者本人へのアプローチとしての1分間体操の運動定着を図るツールとして、「かめおか健康長寿お宝ノート」を制作し、その普及システム構築とボランティア養成を行った。 また1分間体操の活動量についても検証した。そして、生活環境の調整や、地域の中に生きがい・役割をもって生活できるような居場所と出番づくり等、高齢者本人のバランスのとれたアプローチのため、地域において住民自身が運営する体操の集いなどの活動継続、人と人とのつながりを通じて亀岡市を中心に京都府下に通いの場が継続的に拡大していくような地域づくりを推進した。並行して、現在マニュアルの制作をしている。
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今後の研究の推進方策 |
生活習慣病の予防,社会生活機能の維持および向上,生活の質の向上の観点から,身体活動や運動はますます重要性を増している(厚生労働省, 2012).これを踏まえて,厚生労働省(2013)は,健康づくりのために必要なスポーツや体力づくり運動で身体を動かす量,すなわち運動量の基準として,18から64歳の人に対して,3メッツ以上の強度の運動を1週間あたり4メッツ・時行うことを推奨し,息が弾み,汗をかく程度の運動を1週間に60分行うことを具体的に求めている. 運動の習慣化ができていない層に対しての運動定着を図るツールとして、「かめおか健康長寿お宝ノート」の制作と普及人材育成、地域展開を図るとともに、地域に元気アップ体操教室を継続開催し、体操人口の拡大を図り、次には体操実施者やボランティア活動への参加度による体力向上の検証を行いたい。 また、健康を中核としたまちづくりが、自治体の長期計画に位置づけられていることや大学や研究者、医療機関や医師と連携して、健康づくり事業の計画策定や推進に取り組むなどのシステム構築はできているが、積極的な実践にはつながっていない。そこで、体操で元気になった後のアクティビティの開発を目的に、我々が注目したのがクアオルトというドイツの取組みや自然環境や自然資源を活用した健康増進プログラムである。日本ではクアオルト財団があるが、まずは自然プログラムを活用した取り組みとして、フォトロゲイニングというナビゲーションスポーツを学生を中心に展開し、今後は高齢者やファミリーを対象として、研究を進めるとともに、ご当地体操の展開や体操発表の場のステップアップを図り、QOLの向上を目指す仕組みを開発し、エビデンスを構築する。これまでの研究と活動成果を出版する予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
昨年初めに、全国調査をする予定が、健康づくり事業財団が調査をしたため、亀岡市の介護サポーター養成と「健康長寿お宝ノート」の制作を優先した。DVDやマニュアルについても制作途中であり、支出できていない。また、虚弱高齢者の問題が浮上し、亀岡市との調整で、昨年から、マインドフルネストレーニングの研究が始まった。今後の課題が浮き彫りとなり、当初の研究課題を順調にこなしながら、新たな課題についても、若手研究者を育成しながら順調に進んでいる。また、虚弱高齢者についてはマインドフルネストレーニングにより、障害の受容を促す心理状態である老年的超越を高め、メンタルヘルスの維持・向上を図ろうとする新たなアプローチでの研究もスタートしている。
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